正義・番外編 | ナノ



夏の思い出
しおりを挟む


夏の思い出

「氷雨様、お客様ですよ」

鈴を転がしたような声、と言っても誰にも文句は言われないだろう声。
それは城戸邸の新人メイドちゃんの声で、私担当の子だ。
扉を開けて、彼女と顔を合わせる。
今日は、誰かと会う予定はなかったはずだけど、と聞けば、宿題を見て欲しいそうです、と可愛らしく笑う。
ああ、なるほど、星矢君たちか。

「じゃぁ、書斎に案内してくれる?準備してすぐにいくから」
「畏まりました。第一に案内します」

一礼して去っていく彼女の後ろ姿を暫く見送ってから、部屋の中に視線を戻した。
…後で掃除しよう。
シャワーを浴びて、ワンピースを着る。
タオルで髪を拭きながら、書斎に行けば、5人が宿題と思われるワークを開いて、各々取り組んでいた。
ちなみに、城戸邸の第一書斎は、ちょっとした図書館のようだ。
書斎なのか、と常々疑問に思うが、部屋のところに書斎と書かれているので、書斎なのだろう。
中央の机の奥側に星矢君、瞬君、一輝君が座っており、星矢君の前に氷河君、一輝君の前に紫龍君が座っている。

「お待たせー」
「おう、待ってたぜ、氷雨さん…て、髪は乾かして来いよな」

嬉しそうに顔を上げた星矢君が瞬間的に呆れた顔になる。
それくらい俺でも待てるって、と続けられた言葉にそう?と首を傾げて、空いている席に座った。
と、一輝君が席を立ち、私の後ろに立つ。

「ん?」
「拭いてやる、どうせ一度には教えられないだろう?」

タオルを手に取って、柔らかな手つきで、私の髪に触れた。
少し悩んだが、ありがとう、と返して、他の4人をちらりと見る。
近場の紫龍君の苦手は英語だ。
彼は中国語は完璧なのだが、どうやら英語になると単語で躓くらしい。
逆に彼は歴史に関しての興味が深く、得意教科は社会。

「あ、紫龍君、此処違う」
「えっ、」
「ほらここ、関係代名詞の種類もう一回復習してみ?」

はい、と素直に頷いた彼の頭を撫でて、次にいく。
反対隣の氷河君の苦手は国語だ。
ロシア語、ギリシア語、フランス語、英語とかなりの言語が出来る彼は、並びの違う日本語が苦手なのだそうだ。
特に、小説の行間を読むって何事ですか、らしい。
あと、古典って、アレどういうことですか、使い道はなんですか、だそうで。

[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 本編に戻る ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -