正義・番外編 | ナノ



弟たちの牽制
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弟たちの牽制

「氷雨さんがお見合い?!」

星矢の叫びは園中に響き渡った。
だが、夏休みに入っていた星の子学園では子供たちの騒ぐ声に掻き消される。
唯一、聞き届けたのは、聖闘士として聖衣を授けられた者だけだった。

「どういうことだ!」

扉を壊す勢いで入ってきたのは一輝。
それに返事をすることのない沙織はちら、と扉を見た。
入ってきたのは、氷河、瞬、紫龍。
彼らは面倒を見ていた年下の子供たちを、同様に星矢の叫びを聞いた邪武たちに預けてきたらしい。
どことなく申し訳なさそうな表情をしている。
その面子が入ってきたところで、沙織が声を発した。

「正確には、お姉さまが一方的に見初められたんです」

それから、と続ける沙織。
氷雨を見初めた提携会社の役員の息子は、どうにか彼女と知り合おうとしたが、彼女は滅多に城戸邸から出ない。
出掛けるときは分刻みのスケジュールで関わる暇がない。
休日は城戸邸で休んでいるか、もしくは星の子に顔を出すだけだ。

「だから、今度の休日…つまり3日後、自らが孤児院を開くと、此処に視察に来ます」

彼女と自然に知り合う予定らしいですよ。
眉を寄せながら、不快そうに言った沙織はですから、と5人に柔らかく笑いかけた。

「勿論…わかって、いますよね?」

その言葉を残し、沙織が仕事に行ってから、2日後。
決戦の日を翌日に控えた5人は頭を突き合わせて、考えていた。

「氷雨さんを誘って何処かに行くか?」

氷河の言葉に瞬が首を振る。

「それはダメだよ、他の子達が悲しむから」

皆の姉として面倒を見ている氷雨は、小さい子にも人気がある。
だからこそ、彼女が来る前日、例えば今日は何時もよりも掃除を進んで行うし、花が飾られ華やかな空気になる。
彼女は約束を守る人間らしく、何か急用が入っても必ず一時間は顔を出す。
そして、次の休みの日に埋め合わせとして、手料理を御馳走してくれるのだ。
その料理は子供たちに人気で、埋め合わせ以上の役割を果たしているのも事実である。

「でもよ…子供たちに関わっているなら男が近寄る隙も無いんじゃないか?」

星矢の声に首を振ったのは紫龍。

「そうはいかないだろう」

子供では仕事の話と言われれば、彼女を渡してしまうだろう。
例え同僚でなくても、彼らには判らないのだから。

「やはり、俺たちが付いているしかないか」

一輝の言葉に静かに頷く4人。
ただし、彼ら5人は子供たちにお姉ちゃんを独占するお兄ちゃんたち、として敵視されているのを忘れてはいけない。

「美穂姉ちゃん、星矢兄ちゃんたちサボってるよー!」

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