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超英雄


「ねえ、承太郎。」

声をかけると不満そうな視線が返ってくる。
そりゃぁ、迷惑かけたとは思うけどさ、少しくらいは大目に見てくれてもいいと思うんだ。
ヒールが階段に引っ掛かって転びそうになっただけだよ。
結構よく起こるんだって、なんて言ったら許してもらえなくなるから言わないけど。
でも、私にとって、ヒール部分は階段に引っ掛かるものである。

「何だ、」

私が転びかけたところを簡単に片手で支えてくれた承太郎は、笑顔1つ浮かべることなく、答えた。

「ありがと。」

緑色で綺麗な瞳を見つめて、笑う。
一瞬だけ驚いたようにして、すぐに一度瞬きした彼は、露骨なため息を吐いた。
む、と眉を寄せる。

「何度目だ?」
「…何が?」

私の答えに、承太郎の口元が引きつったように見えた。
がし、と大きな手で頭を掴まれる。
人一人余裕で殺せそうな、鋭い眼光が私に思いっきり注がれている。

「だって、承太郎の世界に近づいてみたいんだもん。」

視線を逸らしながら、頬を膨らませた。
大きな手が離れて、ついでと言わんばかりに、もう一度溜息が聞こえてくる。
むぅ、と不満アピールをしながら顔を上げた。
…と、口元に手を当てている承太郎がいる。

「照れてるの?」
「うるせぇ。」

どうやら、図星のようだ。
今が攻撃のチャンスだと、私の長年の経験が訴える。

「それにね、ヒールは承太郎が一緒のときにしか履かないよ?」

怪訝そうな視線ににぃ、と笑う。

「だって、承太郎はスーパーヒーローだからね。」

ヒロインはスカートでヒールで、ステキな女の子じゃないと勤まらないの。
そう続ければ、やれやれだぜ、と彼の口癖。
これを引っ張りだせば私の勝ちは確定である。
よっし、と心の中でガッツポーズを決めた。
最後にだめ押し、しておこう。

「でも、心配かけてごめんなさい。」

申し訳ないとは思っている。
私は承太郎がいるという理由で、必要以上に安心しているのだが、階段で転んだらかなり危険である。
打ち所が悪かったら、最悪の場合だってあるのだ。
素直に謝れば、仕方ねぇな、と声が聞こえて。

「次から気をつけろよ、氷雨。」

私はその言葉に笑って、承太郎に抱きついた。
スーパーヒーロー



あとがき
名前変換が少ない…題名は直訳してみた。

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