籠球 | ナノ



君が笑うから


君が笑うから

その日の部活は特に変わったことはなかった。
一番はいつも問題を起こす清田が、借りてきた猫の様に静かだったからだ。
この間マネージャーに迷惑をかけた所為で神に怒られたこと。
それから、牧に練習を倍にされたためだろう。
きっと、一週間も立てば普通に戻るだろうが…。
それでもまだ、その日清田は静かだった。
神と牧もマネージャーの様子が可笑しいとかで、妙に静かだ。
ふと、そのマネージャーが声を上げた。

「氷雨ちゃん!やっときたね?」
「わ、その…、ありがとう、ね。」

マネージャーはニコニコ笑ってその女の子を体育館に招き入れる。
女の子は穏やかそうで、なんといっても可愛らしかった。
庇護欲を誘われる、その様子に数々の部員が微笑む。
しかし、それは、稀な光景で、基本的にバスケ部には応援席以外の女子の立ち入りはない。
それこそ、誰かの特別な存在でない限りは。
一瞬にして部員に緊張が走る。
誰だ、あんな可愛い子を手に入れた者は…。
視線が交錯する、ふと、声を上げた一人の男。

「氷雨、どうした?」
「あ、カズくん!」

カズくん…そう呼ばれるのは、と全員の視線が男子マネージャーに集まる。
しかし彼は首を振り、指差した。
その先には、高砂、本名高砂一馬がいる。
武藤が膝から崩れ落ちた。
その様子を一瞥してから、注目を浴びている彼は臆することなく彼女に近づく。

「どうしたんだ?」
「あのね、おばさんから伝言なんだけど、」
「ああ、」
「今日は結婚記念日だから、お家を空けますって。」

はぁ、と高砂はため息を吐いた。
それから、ぽんぽん、と30cm以上違うだろう彼女の頭を撫でる。
嬉しそうに顔を綻ばせて見上げる氷雨に困ったような、呆れたような表情を浮かべた高砂。
手を下ろして、言い聞かせる様に言った。

「待ってろ。送る。」
「うん!」
「マネージャー、いいか?」
「勿論です、氷雨ちゃんは邪魔になるようなことする子じゃないですから。」

ほらこっちー、と楽しそうに氷雨の手を引き、特等席に座らせた。
高砂さん、カッコいいとこ見せてくれるといいねー。
などと能天気に笑うマネージャーに、氷雨もはい!と元気よく頷く。
すぐに、でもいつも格好いいけど…と続いたのは妙に静まった体育館で緩やかに響いた。
その一言で敵意の視線が増えたと気がついた高砂は、はぁ、とため息を吐きながらも、頬を緩ませた。


(「ゆ、許さねぇ…許さねぇぞ高砂ぉおおお!」)
(「何だ武藤。」)
(「うるせぇ黙ってやられろ、」)
(「…それは出来ないな。」)

(「カズくん…格好いい!」)
(「二人は付き合ってるの?」)
(「へ?…!!!そ、の…ぅん。」)
(「そっかぁ、ラブラブだねー。」)
(「ラブっ?!…あ、カズくんカッコいい!!」)



微妙に『旦那』とリンク
幼馴染ちゃんは原作2年でA組かB組ぐらいだといい。

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