さて、そんなわけで何ともキャラの濃いお友達が増えてから数日。
 特に何もなく平穏にストレスフリーに過ごしてしました。
 
 それはもう、あからさまなくらいの"嵐の前の静けさ"でした。

「えーじゃああとはガイドさんの言うことを聞いて、マナーを守って過ごしてください。」
「「「はーい!」」」

 そんなわけで、宿泊開始です。
 主な予定は2泊3日で午前午後一個ずついろいろ。
 行先はなんかよくわかりません。
 近くの自然の中の学校の仲がいい施設だそうです。
 
 ということで空港行きバスが出発します。

 私たちは前の方になりました。
 左右2列ずつで分けて班をまとめているので、私たちの左側は前2列は相坂さんたち、3列目に私とサク、4列目になせことオミ。
 私もなせこも飛行機も無理ならバスも無理なんです。

 ちなみに補助席を介した向こう側にはアイくんミヤビくん、その後ろにマリくんいしまきくん。
 代わってくれたそうです。優しいね。

「糸由ー俺と代わろうぜ」
「いいわよー」
「桜子に怒られるよーサク」
「大丈夫よ。あたしたちだけダメ、なんてことないでしょう」
「いや、だからもともとだめなんだって…」
 
 桜子はたいていのことは許してくれるけどけがするとか面倒臭い要因をはらんだときのみ結構普通の教師と同じ沸点で怒るからね。

「あ、大丈夫っぽい。桜子イヤホンして寝てるよー」

 笹さんがこっちを向いて教えてくれた。笹さんは雪間さんのとなりの女子。

「そうなの!ありがとう笹ちゃん!」

 サクは社交性高いなあ。
 そんなわけでのそのそミヤビくんがうつってまいります。

「おいミヤビしばくぞ」
「やーい嫉妬ー」
「ああん?」

 ななめでマリくんとミヤビくんがメンチを切り合う。

「おい、代われそこ」
「無理だ!」
「こいつめーははは」
「マリ切れすぎ」

 マリくんは補助席に座ることになったみたいです。なにしてる。お前らおとなしく座ってろよ…

「私酔うから寝るよ?構えないよ」
「いい、いい」
「あらそう」

 なんだかいかにもなつかれてるみたいで愛着わきそうね。

 マリくんも後ろとミヤビくん気にして"お仕事"の方もできずに手持ち無沙汰らしい。
 ミヤビくんはなんか知らんけど機嫌よさそうに携帯をいじっている。

 私も酔うし携帯できなければ音楽も聞けないので手持ち無沙汰だなあ。
 寝ようかな。

「暇だししりとりでもすっか」
「あら!いいわね!」

 マリくんがぼんやりと言って、ひとつ飛ばしたとなりからサクが楽しそうに賛成する。

「じゃああたしからね!"りかるでんと!"」

 騒がしいのでなかなか声が聞こえにくい。
 みんなまだ元気が有り余ってとてもうるさいことになっている。

「なんでそれちょいすなの」

 アイがくすりと笑って"トマス・アクィナス"という指定をだす。
 マリくんも珍しく笑った。

「お前こそなんでだ。日本史のくせに。"スタイリッシュいちまんじゃく"」
「ちょっマリくん!」

 私とオミとアイくんが吹きだす。サクは無言で実行していてよけいに笑う。
 おなか痛いおなか痛い!いきなり笑かすのいけないと思います!

「まじ発想力尋常じゃねえわー。"クリシュナ"」

 すこし笑ってからさらっとミヤビくんが言う。その言葉、聴いたことだけはあるなあ。歌とかで。

「なにそれ」
「ヴィシュヌ神かなんかの。8番目かなんかって」
「へえ。」

 アイくん意外にそういうのがお好きなよう。
 ヴィシュヌってことはヒンドゥー教だっけーとかマリくんに聞いている。
 そして答えるマリくん。なんでも知ってるのあの人。

「な、なーか。んー」
 
 なせこ、はなんか違うしなあ。

「"ナーゲルリング"」
「なんだそれ」
「わすれた。なんか武器じゃない」
「架空の武器だったはずだな」
「だからマリくんはなんでも知ってるの」
「何でもは知らない。使ったことのある言葉だけだ」
「そうですか」

 使ったことあるっけなあ。さすがに一字一句は覚えていない。

「ぐ?ぐ、ねえ…あ、"愚行"!」
「だからひどい。"ウマル・ハイヤーム"」
「お前もその気なら俺も受けてたとう。"ムガール帝国"」
「そこはお前は逆に日本史でいくんじゃねえのかよ。"クリュニー"」
「え、え、世界史縛りなの?」
「アイは日本史でもいいぞ」
「負けないよー」
「っていうかアイくんはそれならなんで日本史にしたの」
「世界史はある程度知ってたから」
「ハイスペックすぎた…"ニーベルンゲン"…"のうた"」
「た、た…たらこ…"ターリバーン"あっ違う今のはまだなしよ違うわよ」
「わーサクアウトだー」
「"タージマハル"とかあるじゃねえか」
「とかいいつつお前ら名前知ってるだけでそれが何かも分かってねえだろ」
「いやタージマハルは知ってるぜ?」

 そりゃそのとおりですとも。
 サクと私、両サイドから真ん中のマリくんに大抗議。そんなねえ、みんながみんなハイスペックだと思ったら大間違いです!

 と、まあそんなわけでしりとりをしていたりなんやお話ししたりしているうちに空港に到着です。
 大してして遠くはないんです。

「あーやだよ飛行機だよー」
「ほんとだよー飛行機だよー」

 なせこと2人、空港内ではびくぶるしています。
 あーやだやだ。イタイつらい。

「酔わないのに限ってこうなんだよねえ」
「もう外に出るなって言われてるんだよこれたぶん」
「はっそういうことか…!」
「ほらーそこの引きこもり2人。置いてくよ」
「「あ!オミまって!!」」

 飛行機内は本当に、私となせこが隣だったのでお互い本気で痛い死ぬという会話くらいしかしませんでした。
 まだみんな元気だったようで体育教師に怒られたりしていたみたいですが、どっちの声も私たちにはあまり聞こえていませんでした。
 高度上げきって落ち着いた頃にはまあ、2人で適当にくっちゃべってましたが。

「ちょっとサクなんかしゃべって」
「え?なんかってなによ」
「おお、いいよそのまま続けて」
「話つながってないじゃない!」

 飛行機を降り、またバスで移動をする。このころになると、今までうるさかった真ん中くらいに座ってる人たちやうちの班の人たちは飽きてきたらしく静かにおしゃべりするだけになって、一番後ろに全員で陣取っている矢棚さん陣営がなぜか今まで同じように騒いでいた相坂さん陣営たちに"うるさい。空気読めよ"とか言われ始めてました。かわいそう。理不尽なこともあるもんだね。

 と、まあそんなわけでバス移動もようやく終わり、宿泊施設に到着したわけです。お昼頃です。
 なんというか、普通にお土産屋さん的なものが入っていたりファストフード店が入ってたりして、ホテルに近いような違うような不思議な建物でした。

 昼食をこの建物の食堂でとったあとは、よくある自然体験的なものをやった。
 こう…ジャム作ったり木で彫り物したりなんじゃいろいろ。
 女子人気はぶっちぎりの小動物ふれあい体験だそうです。近場にそういうところがあるんだとか。

 ちなみに私たちはそんな女子人気にも目もくれず私たちは機械でする搾乳体験に参加しとりました。
 理由?機械ってんだから一番体動かさずに体力も使わなさそうじゃない?
 そして意外にも参加者がおおいという。
 有志で手でも絞らせてくれるとのことでしたがなんとなく恐くてできなかった弥蜂たちでした。

 ちなみにマリくんたちも同じところに参加していたのですが、いしまきくんと2人で怖いね、とか言ってました。和んだ。
 そしてマリ班はマリくん以外みんな萌え袖ジャージしてやがってオミが怒ってました。あざとい!って。
 私はひそかに絶対領域は足ではなく腕派(手袋とかして腕まくってるのとかよくないですか。え?分からんって?)なのでどっちもあざといと思います。
 
 マリくんはとても手がきれいです。
 あとミヤビくんが意外にも女みたいな手をしていまして。もう。もう!!
 手はいいですねほんと。オミとかも綺麗だしサクなんて理想の女性の手ですよね。ああ楽しい。

 その後はずっとフリーだったので建物のなか探索したり部屋でお菓子くったりと普段と大差なくぐだぐだとすごして、行事一日目を無事終えたのでした。

 ああ、まあなんかよくわからん、ほかのクラスの何とかくんはきっと合宿中に彼女を作るという青春ドラマをしたかったんでしょう、私に好きですとか言ってきたけど、それはね、ほら。
 私あなたのこと全然(名前すら)知らないので…的な感じのオーソドックスな感じでごめんなさいしておいたけどね。

 さすがに名前も知らないのはちょっと…そして手が好みじゃなかったので…ごめんねなんとかくん。せめて次の子にはちゃんと名乗ってから告るといいと思うよ。




[*prev] [next#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -