「8と6が1班な!」

 委員長が言う。心なしかうれしそうだ。

 やったー!と、ようやく浜さんが笑顔になる。
 矢棚さんと茶髪男子が8で浜さんたちが6だったみたいだ。
 
 …瀬名がかわいそうすぎて泣けてきた…。

 まあ、いやな話、私にしてはしょっぱなから苦手そうでできれば同じ班になりたくないところが二つ消えてとてもありがたいんですが。

 …とまあそんなわけで順調に進めていけたわけです。
 
 まあ、私たち4人は相坂さんたちと同じ班になってしまいましたけどね…
 ちなみにマリくんたちは吹奏楽女子+森ガールの1人のところと組むことになったらしいです。まあ、平和そうな班ですね。

「よろしく、室玖さんたち!」
「うん、よろしくね」

 ということでそれなりにまあ私たちの方も、平和っちゃあ平和な感じには表向きはなりそうです。なるといいなあ。

 まあ、でもこの学校の適当な行事の歴史から見ても、どうせ今回も班で行動するなんて食事のときだけとかでしょう。
 基本は何するにしても4人のグループが優先だと思う。大丈夫…たぶん。

 だって去年も似たような感じだし。
 っていうか班長と委員長のライングループ作ってそれで返事があれば点呼成立、とかいう適当さだったからね。ほんとに。

「じゃあそれで決定でいいですか」

 桜子が終わった感じを察知したらしく声を出した。
 矢棚さんたちだけがはーい!と元気にあいさつをする。

 ああ、そう思えばさんざん自分勝手(これは私の意見見解ではなく、雪間さんの言い分としての言葉)騒いでごねた挙句、彼女たちだけが仲のいい班だけで固まった結果になったんだなあ。

 吹部女子は当初の予定とは違いマリくんたちと組むことになったし。(あ、でも彼女たちは別段嫌そうな雰囲気はない。吹部のハルカちゃんいしまきくんと仲良いらしいし。)

 森ガールと男子のとこは矢棚さん陣営の軽音部女子と班になっててすごい殺伐してるし…

 私らの片割れのグループは相坂陣営の運動部男子だし。(かかわりたくないから少し困ったような雰囲気だ)

 まあ…あと私たち、だし。
 相坂さんと一緒とかなにその争いの中心に放り込まれた感。いがいたい。

 まあ…ほんとに…仲良くはしてくれるんだけどね…彼女たち…でも…矢棚さんたちの悪口をご飯中聞かされるとかせっかくのご飯を腹痛で楽しめないかもしれない…

「じゃあ今日は帰りのHRなしなんでチャイムなったら各自で帰ってくださいね。以上」

 桜子はまたそんなことを言ってもう教室を出て行ってしまった。
 桜子の人気の秘訣だよね。

 もうそれを皮切りにみんな携帯いじりだす(授業中は使っちゃダメな約束に一応なってる)しゲームしだすし一気に休み時間化する。
 さすが安定の桜子クラス。

 私はというといつも通り自分の席でオミとサクとあとなせことお話ししてます。

「なんかすごいことになったね…」

 疲れたように、なせこ。
 ほんと、この人はよく私に似ている。

「そうねー。
 あ、てかさー服やっぱ私服かなあ…」
「いや、来年だけじゃない?」

 まあ、こういう話はどういう話にせよ角がどっちの陣営にもたちそうなので、早々に2人で話をそらすんですけどね。

「え!私服で行くこともあるのかい?」

 オミが驚いたように声を上げる。

「あ、オミ初めてなんだっけ。そうそう。たまに私服で行くんだよ。たぶん3年の修学旅行だけかな?」
「そうなんだ!」
「飛行機に乗るのよね?」
「そうだねえ。」

 サクに至っては、こういう学校行事自体が珍しいのか。
 そうか。すっかり2人ともなじんでるから忘れかけているけれど、そういやこの2人は少し特殊なんだった。

「私飛行機苦手だよー…」

 なせこは耳を抑えながら顔をしかめる。

「まじそれな。私も耳貧弱だからさあ…」
「抜けばいいとか言うけどそんな程度じゃだめなんだよね。分かってもらえないけど」
「わかるよ!分かってもらえないことがすごいわかる!」
「さすがらんだわー」
「さすがなせこだわー」
「安定のシンクロね」
「そうだねえ」

 なんて2人が親か何かのようにこちらを見ている。なんと…

「みんなで泊まるのね」
「そうだねえ」
「あたしそんなの初めてだわ」
「よかったじゃないか」
「ええ!」
「私も何年ぶりだろうかねえ…」
「おばあちゃんみたい。てか、オミって前の学校はこういうのなかったの?」
「なかった、っていうか…なんだろう、私が行ってないだけなんだけど」
「あ、そうなんだ」

 不思議な会話をする2人を私たちもほほえましく眺めたりして。

 …ああ、そっか。何年ぶり、って確かにそうだった。てことは何年も年も取らず学生じゃないひとが所有してたってことかな。"本"を。

 そうこうするうちに、6時間目終了のチャイム。
 みんなが待ってました、というように帰り始める。
 いつも、すこしオミとサクと話してから帰っていて、最近ではそれにアイくんとマリくんも混ざっていたりして、4人を巻き込んで中本たちのクラスの終わるのをまっているわけです。 
 だから、いつものようにのんびりとオミと話し始めつつサクが帰り支度を終わらせて私の後ろの席に座るのを待っている。

 うちのクラスは帰りたい奴多すぎるのでほかのどのクラスよりも人が少なくなるのが早い。現に、もうすでに人はほとんどいない。


「ちょっ…え、なによ、これ…!」

 ばさり、とノートだか本だかが床に落ちた音がする。そして、すこしして、サクの声。
 初めはだれか鞄とかでも落としたのだろうと、振り向きもしなかったのだけど、サクのちょっとばかしおかしなようすに思わずそちらをみる。

 鞄を落としたのは加倉くんらしかった。そして、その荷物を拾ってやろうとしたのだろう、サクはその散らばった荷物を信じられないように、触るのも怖いというように手を伸ばしかけた体勢のまま、ただ茫然と見ていた。

「おい、人の手帳勝手にみんなよな」

 少々異常なまでに狼狽するサクとは裏腹に、加倉くんは至って平然としている。そうして、さっさと手帳らしきものを拾って、鞄にしまってしまった。

 なんだろう、あの光景は。

「どうしたの?」

 アイくんがすかさずサクに駆け寄る。

「て、手帳…、に、えっと、なんか、ラン…?」

「えっ」

 思いがけず私の名前が出てきて、目を見張る。なに、悪口がびっしりとか?そんなに恨まれてる、わたし。

「…まさ、ちょっと、手帳見てもいいかな」

 アイくんも訝しみながら、加倉君に問う。

「はあ?なんでだよ」
「悪いことは、分かってる。でも、このサクの様子はただ事には思えない。」

 気が付けば、マリくんもそっちにいて、加倉くんをアイくんと挟む位置に立っていた。

「サク、ランがなんだって。」
「あ、そ、そうね。ごめんなさい、びっくりしたの…加倉君、もしかしてそのガムの明らかにかんだ後のものや、コーヒーの空き缶は、ランのじゃないの。」

 サクが、鞄を指さして言う。

 おお…確かに手帳の中身を大々的に言っちゃうのは悪いと思った、ってところまではとてもいいと思うけど…そんな人を変質者みたいに言うのはダメだとおもうんだ…!おしいよサク…!!
 
 てか、なんで私?

「はあ?そうだよ、なんか文句あんのかよ」
「えっ」

 再びの予想外にもう私は聞こえてもいいというくらいの大きさで声を漏らす。
 え、っと…なんだろう、みんなして私で遊んでるの…?

「貸せ」

 いうが早いか、マリくんが背後から加倉くんの鞄を奪い取る。
 さすがに、オミが耐え切れなくなったのか立ち上がり様子を見に行った。

「…確かに、ランのよく飲むコーヒーだな…」

 ビニールに入った缶。マリくんが掲げる。
 目は悪いけど、形と色がそうだとおもう。
 確かに今日も朝からいただきましたとも。社会科の先生と自販機で立ち話しながら。

「ラン、今日はこれ飲んだのか」
「え、う、うんのんだけど…」

 私1人だけがただ離れた位置で茫然と見ていることしかできない。

「ランの、なんだな?」
「そうだって。」

 やはりなんでそんなにみんなが騒いでいるのかわからない、そんな加倉くん。
 そして、爆弾発言。
 

「らんこの恋人で、本人から許可ももらってんだ、なんも問題ねえだろ」

 …いつの間にリア充だったんだっけ、私…



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