【ED後・攻める斎藤】




濡れた漆黒の髪に手拭いを載せ、優しく水分を除く。

「お風呂の後はちゃんと拭いて下さいって、いつも言ってるのに」

されるがままの斎藤を前に、千鶴は唇を尖らせた。

風邪を引きます、といくら言っても聞いてもらえずに、なかば強引に彼の髪をぬぐう事が、最近は恒例のならわしになりつつある。

「はい、今日はこれで終わりです」

斎藤が己の体調に頓着しないことにつむじを曲げ、千鶴は早々に触れていた手を離そうとした。すると、不意に強い力で引き寄せられ、千鶴は先ほどよりも彼の近くに寄り添うような体勢になる。

至近距離で見た彼の表情が、思いのほか艶やかで、千鶴は息を呑んだ。

「何を怒っている?」

からかうような斎藤の声に、千鶴の体温が上がった。

「だって、一さんが、言うことをぜんぜん聞いて下さらないから」

頬を染めて言うと、斎藤の目が細められた。

「仕方ないだろう。おまえに触れられるのは心地良い」
「なっ…!」
「だが、俺から触れるというのも心地よいな」

そのまま、懐深くに抱きすくめられ、千鶴は身を固くした。

「あ、の。一さん…」
「ん?」
「一さんは、意地悪になりました」
「……そうかもしれんな」

斎藤の笑みが深くなる。

本当に、困った人。

ひんやりした彼の髪と、熱い肌を感じながら、千鶴は彼の口付けを受け止めるのであった。


end.

2010/10/09/Twitter

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