【旅の途中・沖千】



露わにされた裸の肩に、沖田の額が載せられた。
これに千鶴がたじろがない訳はなく、必死に彼の名を囁きかけるが、返事はない。
不意に彼を庇ってついた傷に触れられ 、少女は身を強張らせる。戯れで触れたわけではないことは明らかだ。

「ごめん。守りきれなかった」

にがりきった口調で、沖田が言った。
それはまるで泣いているかのようにも聞こえ、千鶴は思わず彼の頭に手を触れた。

「大丈夫です。私は、大丈夫ですよ」

囁くと、沖田はもう一度強く、歯を食いしばった。

もしかしたら、とても深く傷付けてしまったのかもしれない。
それでも、彼の身を守れたことを、嬉しく思う。

この旅路の記憶は、おそらく宝物にはならないだろう。
沼の底を這いずるような歩みの先に、何が待っているのかは分からないけれど。

「あなたとなら、大丈夫なんですよ」

もう一度囁いて、千鶴は目を閉じた。


end.

2010/09/27/Twitter

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