07


一護はあの後、改造魂魄を破棄処分にはしなかったらしい。というか、改造魂魄と普通に仲良くなっているし。相手の気持ちを無下にしない所とかは、一護らしいといえば一護らしいけど。

『?・・・何、あれ?』

買い物帰りにそんな事を考えながら歩いているとトボトボと歩いてくるライオン?みたいなぬいぐるみを見つけた。普通じゃないよな。あれ。霊が入っている感じではないし。つか、ぬいぐるみには入れないよな。

『あー・・・改造魂魄か・・・』

一護の奴、ぬいぐるみに入れたんだな。改造魂魄を。普通は考えないであろう事をする一護に少し呆れた。まぁ、こんな所で会ってしまったわけだし、ちょうど一護の家に行くところだったし、届けてあげますか。

『・・・捕まえた。』

まだ歩いていたそのぬいぐるみに気付かれないように捕まえて、持ち上げた。その時に声がしたけど、うん。気にしない。気付かなかったふりをして一護の家にレッツゴー!

『一護ー!いるー?』

一心「一護ならまだ帰ってきてないぞ。・・・ってなんだぁ?そのぬいぐるみは?」

一護の家に着き、玄関前で声をかけると一心がそう答えて出てきた。私が持っているぬいぐるみを見て眉間に皺を寄せている。

『一護へのプレゼント!』

一心「そうかよ。で?どうしたんだ?」

『うわー。自分の息子への態度の違い。いつものテンション何処行ったのー。おじさん。今日は皆でご飯でも食べよーと思ってねっ!!?』

私がけらけらと笑いながら言ってるから一心は呆れてる。そんな一心に買い物袋を見せながらご飯作るよと言うとありがとよ、とお礼を言われあがらせてくれた。ゆいぐるみを一護の部屋に置いてから台所を借りて晩御飯の準備に取り掛かった。

一護のお母さん・真咲さんが生きてる時は真咲さんが作ってくれたご飯を時々一緒に食べて、真咲さんが亡くなってからは私が時々作りに来てる。いつもは遊子ちゃんが作っているんだよね。本当は毎日でも作って良いんだけど、さすがにそれは悪いって一心に断られたんだー。

一護「なんだ穂奈美、来てたのか。悪いな。」

『おかえりー!今日は時間が出来たから。』

一護「おう・・・ただいま。」

照れ臭そうにそう言う一護に慣れないんだなと思ってしまった。

遊子「あー穂奈美ちゃん来てるー!いつ来たの?手伝うよ!」

『少し前だよ。じゃあ、一緒に作ろうか。』

うん!と元気よく返事をして手伝ってくれる遊子ちゃんは、楽しそうに今日あった出来事や学校での出来事を話してくれた。遊子ちゃんが嬉しそうに笑うのもだから私も嬉しくなり、ずっと微笑んで聞いていたと思う。多分、真咲さんが生きていたら毎日、遊子ちゃんとこんな会話をしていたんだろうなぁっと考えてしまった。

夏梨「今日は穂奈美姉のご飯!やったー!」

『ふふっ。夏梨ちゃん、お帰り。もう出来るから手を洗っておじさん呼んできて。』

夏梨「ただいま!分かった。」

そう言うと夏梨ちゃんはリビングから出て行った。一護はずーっとテレビを見ながらリビングに居たから呼ぶ必要ないし、ルキアちゃんは、一心以外いることに気付いていないだろうから呼んだらダメだろうし。

『遊子ちゃん。テーブルにお皿持っていってくれる。私は片付けをするから。』

遊子「うん!」

遊子ちゃんに出来上がった料理が入ったお皿をテーブルに持っていくように頼み、その間に使った道具等を洗って片付けをしていく。そうこうしているうちに一心と夏梨ちゃんが来た。

一心「相変わらず、美味しそうだな。」

夏梨「穂奈美姉の料理久しぶりだ。」

遊子「遊子も手伝ったんだからね!」

『ありがとね、遊子ちゃん。じゃあ、食べようか。手を合わせてください。』

「「「「『いただきます。』」」」」

手を合わせ、そう言うと皆で食べ始めた。

一心「うまいなぁ、こりゃ。穂奈美ちゃんは良いお嫁さんになるよ。一護にはもったいないな。」

一護「あ?どういう意味だよ!?こら!バカ親父!!」

夏梨「また、始まったよ。」

一心と一護の口喧嘩が始まり、夏梨ちゃんは呆れた表情でそれを見ながらご飯を食べていた。

遊子「ほら、2人とも止めて!ご飯冷めちゃうでしょ!」

『ふふっ。遊子ちゃんが母親だよねぇー。』

遊子「え!?ホント!?そう見える!?」

夏梨「そこのバカ2人が子供すぎるからでしょ。」

一心「そんな・・・酷い。娘達が酷いよ。母さん・・・」

一心は壁に掛かった真咲さんのでっかい写真に向かって肩を落としながら話しかけている。そんな光景はいつもの事なので皆、放っておいて、ご飯を食べている。遊子ちゃんや夏梨ちゃんと他愛のない話をしながら食べるご飯は本当に楽しい。

『あ、もう帰らないと・・・』

楽しい時間はあっという間で、太陽は沈み、辺り一面暗くなっていた。

一護「送っていくよ。」

『え・・・大丈夫だよ!そんなに遅いわけじゃないし。』

一護「否、何かと物騒だからな。」

『そう?じゃあ、お願い。』

一護「あぁ。」

夏梨ちゃんや遊子ちゃん、一心にお別れの挨拶をして、一護と一緒に外に出ては、家へ向かい歩き出した。一護も私の歩幅に合わせて歩いてくれている。

『あー久びりに楽しかったー!』

一護「いつでも遊びに来いよ。夏梨も遊子も穂奈美が来るの待ってるんだからな。」

『ムゥ。一護は?一護は望んでないのか?』

足を止め、ずいっと一護の前に出てそう言うと一護も同じく足を止め、顔を赤くして背けた。

一護「俺も・・・待ってるよ。」

小さい声でだけど、そういう一護に機嫌を戻し、歩みを進めた。

一護「ホント・・・小悪魔だよな・・・全然、分かっちゃいないんだ・・・」

『一護ー!置いてくぞー!』

ブツブツ呟いて立ち止まっている一護にそう言うと今行くと言い、足早に近付いてきた。

『あ!そういえば、一護。傷もう、だいじょーぶか?』

一護「おう。大丈夫だ。」

この間、一護はグランドフィッシャーと戦った。54年もの間、死神に倒されることなく、生きていたのだ。相当苦労しただろう。否、追い返すだけでやっとだったに違いない。その時にできた傷がまぁまぁ酷かったみたい。ルキアちゃんが治療できるとこは治療したみたいだけど。

『まぁ、今度喧嘩する時は、私も呼びなよ?助太刀するわ!』

一護「・・・おう。」

まぁ、そんな事言われても呼ばないだろうけどねー♪虚と戦っているんだし。一護は私が死神だって知らないしね。幽霊が見えるって事は知ってるけど、虚が見えているとは思ってないと思うしね。そんな事を思っていると家についてしまった。

『一護、ありがとう。送ってくれて。また明日なっ!』

一護「おう。また明日。」

そういって帰っていく一護の後姿をバイバーイと手を振って見送り、姿が見えなくなってから家に入った。

『こんな日々が続けばいいのになぁ〜・・・』

なんて呟いた言葉は誰もいない家に虚しく消えていった。

To be continued.
20.11.07 up
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