それぞれが考え行動する。他人を想いやる気持ちがあるから。例え、大切な人を傷つける行為であろうと。自分が傷つく行為であろうと。大切な人の為に自分を犠牲にするのだろう。

第8話 彼の気持ちを確認

「裕奈。話があるんじゃが、よかかのう?」

「えっ?仁王くぅん?うん、いーよぉ。精市くぅん、ちょっとぉ行ってくるねぇ?」

「あぁ・・・」

俺と春川が廊下を歩いていると仁王が何処からか現れた。

「裕奈、ついてきんしゃい。」

「うん・・・」

・・・・仁王。一体君は何を考えているんだい?

春川が居なくなった今、気が楽になった。縛られた呪縛から解放された気分だ。

「幸村君。」

そんなことを考えていると、後ろから白石君が現れた。

ああ。仁王はこれを狙っていたんだろうな。

「なんだい?」

「こっちに来てくれん?」

「・・・あぁ。」

白石君が聴きたいことは分かってる。美里を裏切った事だろう?

人気の無い廊下まで来るのに、無言だった。

「自分、何で春川と付きおうとるん?別れて春川につくんは作戦やったから何にも言わん!せやかて、別れよう、言うんと、春川と付きおうのは、作戦外やろっ?!」

声を荒げて言う白石君に目を会わせることなんて出来い。

「すまない・・・美里にもそう伝えてくれ。」

「幸村君?!」

踵を返して、去ろうとしたら肩を掴まれ、振り向いた瞬間、殴られた。

「―っ?!」

殴られた勢いで、凄い音を立てて壁にぶつかった。口が切れて、血の味がする。

「自分、何で黙っとるん?殴られたんやで、言い返したらどうなん?」

「俺が悪い。だから、白石君も殴ったんだろ。それで何を言い返せって言うんだい?」

白石君に襟元を掴まれて壁にバンッと音を立てて押し当てられる。背中に衝撃が走った。

「分かっててやっとるん?美里がどれだけ傷付いとるか分かっとるん?」

「・・・・・」

「何か言うたらどないやねん?!」

分かってる。このことで美里を苦しめてることも傷付けてることも。分かってしてる俺は彼氏失格だ。


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