人間は未来を知ることなんて出来ない。未来を予測することは出来るかもしれないが、それが全て当たるとは限らない。だから、難しいんだ。
第4話 彼氏の裏切り1
朝、美里はいつも通りにコート整備を済ませ、調理室で朝食の準備をしていた。
「自分で仕掛けたこととはいえ、何だか心が煩いなぁ・・・」
美里一人しかいない部屋にやけに大きく響いては、誰にも聴かれることなく消えていった。
「ふーん。昨日あんなことがあったっていうのにぃ出てくるんだねぇー。」
朝食を作り終えた頃、春川がバカにしたように笑いながら現れた。
「・・・(予想の範囲内だから驚きもしないんだけどねっ!だけど、相手になんかしてられない。相手にして調子乗らせるよりは、怒らせたいしねっ!)」
美里は陽気なことを心の中で考えていた。春川は自分のことを無視され、相当怒ったみたいだ。朝食を各皿ごとに盛ってる美里の所にきて、それを奪って変わりにやり始めた。そして、春川は自分から大袈裟に倒れ込んだ。近くにあった皿がその勢いで落ち、ガッシャァァァァン!!と大きな音を立てたのだった。
(今度はこう来るんだ?まぁ、別に良いけどねぇ。罪を重ねてくれれば良いよ、春川。そして、最後に堕ちるのは貴女だから。)
ニヤリと笑いそうになるのを抑え、この音を聞き付けて駆け寄ってくる足音に耳を傾けた。
「どーしたっ?!」
一番乗りで現れたのは、氷帝で一番春川に好意を寄せてる向日だ。向日は美里の方を向き、目を丸くして驚いている。この明らかに美里が春川を押し倒したように見える状況を見て。向日の後から入ってきた者も唖然としていた。
「・・・てめぇーっ!祐奈に何したんだっ!」
「わ、私はっ・・何もやってないっ!」
凄い形相をして殴りかかりそうな勢いで詰め寄ってくる向日に必死に訴えかける。だけど、頭に血が上った向日にはそれは届いていなかった。
「ッ・・?!何をやっているんだい?向日。」
美里の顔に拳が届きそうで届かない所で幸村の静止の声が響いた。
「幸村・・・」
「・・・美里を傷付けるなら容赦しないよ。」
幸村はそう言ったけど、目を美里から背けてる。疑ってるように、と美里に言われたから演技しているんだ。
「・・・美里・・・大丈夫だ。」
美里に近づき、頭をポンポンと撫でた。優しく、愛しい者を撫でるように。
「・・・ありがと・・・」
無意識のうちにポツリと言葉が漏れていた。それを見てた春川は顔を歪めている。
「・・・早く春川を着替えさせたらどうだい?」
オカズを引っくり返して着てる洋服が汚れていた。誰一人気付いた者はいなかったかのように慌てて春川を部屋へと連れていく。美里を睨み付けながら。