忍足 Side

軌翠の顔を見る資格なんて無い。俺はそういうことをしたんや。

「・・・軌翠・・、悪かった・・っ!・お、れ。自分のこと・・信じてやれんで・・・堪忍、や。」

せやけど、これだけは言わせてや。

「謝って済むことやないってこと、わーとる。けど・・・俺には謝ることしか考え付かんのや。許してくれとは言わん。・・・やけど、俺に守らせてくれん?」

こんなことで許してくれるとは思おっとらん。否、許されるわけないんや。そういう事をしたんや、俺は。

「・・・忍足先輩。私は先輩が反省してるって分かっただけで十分です。だから、顔上げて下さい、ね?」

俯いとる俺に軌翠は優しい声で言った。顔を上げて見た軌翠の顔は楽しかったあの頃と同じ顔をしっとった。

「・・・軌翠・・・」

「侑士先輩。前みたいに名前で呼んでくださいよ?」

ニコッと笑う軌翠に俺は戸惑う。

「・・・茜、俺のこと・・・許してくれるんか・・・?」

「はい!」

ほら、涙拭いて下さいよ、と続けて、ハンカチを渡してくれた。

こんな優しい茜を信じんで俺は・・・馬鹿、やな。

改めて俺の愚かさに気付かされる。そして、決意するんや。何があっても守ったると。


――――・・・


徠歌 Side

「ほんと、お人好しだな。」

軌翠さんと忍足の様子を見ていた准羅が呟いた。

「えぇ。」

「あれが茜ちゃんの良いところなんだよっ!」

「お人好し過ぎるのもあれだがな。」

視線を今まで向けていた忍足達から離し、空を見上げる。

「これでまず、1人。真実に気付いたわけだ。次の標的は誰にするか・・・」

ふっと笑い、また忍足達を見る。

「次は誰を気付かせるんだ?」

「んー・・。それは今日行って決めることにする。」

「徠歌ちゃんが部活来たら、皆驚くよー?」

景吾と私の会話を聴いていたジローが私に抱き付いてそう言った。はぁ、と溜息を吐いてジローを剥がそうとするが全然離れてくれない。

「皆、死んだと思っているんだろ。ふふっ。幽霊の格好をして部活に出て行ってあげようか?皆顔を青ざめるんじゃないか。」

「楽しそうですね。」

ふふっと笑って楽しんでいる私に瑞希が突っ込んで来た。

「ほんとにすんのか?そんな格好。」

「しても面白そうだが、そんなことをして遊んでいる暇は無いだろ。」

私が本当にやるのか疑問に思った准羅がこちらを振り向き、聴いて来たので、フッと含み笑いを見せた。

さぁ、これからどうしようか?1人は真実に気付いた。これからどんどん、気付かせていってあげる。東條の仲間は次々に消えて行くんだ。覚悟しておきな。

ポツリ、雨が降り出した。これは酷くなるかもな・・・。

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