>>クロスミッシング
気づいたときからずっと一緒だった。
一卵性双生児?そんな言葉で片付けられないほど私たちは似ている。
顔、髪型、背格好。
好きな色、食べ物、好きになる人。
全部似ていた。
ただ、違うのは、
「隣のクラスの遠山くん格好良いよね。」
「それ、お母さんとお父さんが知ったらとても悲しむと思うよ」
おかしいよ。だって、お兄ちゃんは男でしょ?
それに遠山くんを好きになったのは私のほうが先なんだから。
また被ってしまった。遠山くんは諦めようかな……
「何でお兄ちゃん私みたいに髪の毛伸ばすの、男なのに」
「駄目?似合ってると思わない?」
思わないわけではない。私と同じ髪型だから。
肩に少し掛かるくらいの短さで決して長くはしない。
ロン毛の兄なんて絶対に許さない。
彼はなんでも私の真似をするから。だから私はスカートが履けないのだ。
「健太郎も少しは男らしくしてくれたらいいのだけど。」
「スカート履かないだけまだましだろう、なあ康介。」
「そうだね、父さん。あ、健太郎の奴、今回は隣のクラスの遠山ってやつ好きになっちまったらしい。」
一人称:健太郎