>>いいえと答え続ける






このクラスにはファンクラブが出来るほどのイケメンがいる。

イギリスと日本人のハーフだという彼は美しい金髪を持つ。

手足の長さを充分に活かして1年生にして既にサッカー部のレギュラーの座を勝ち取っている。

気さくな性格の彼は自分の容姿を慢心することもない。

実のところ金髪は自分で染めているそうで地毛はすこし暗めの茶色なのだとか。

教員には内緒だぞとおちゃらける滑稽な彼を嫌忌するものは誰一人いないのだ。


そしてもう一人、その幼馴染だというマドンナがいる。

艶のある黒髪は腰の長さまで伸ばされ、折れてしまいそうなほどの

細さを持つしなやかな肢体は同姓をも魅了するほど。

勉学に優れた彼女は前回の期末考査でも10番以内に入っていた。

いつもにこやかに笑う彼女は世の男共を虜にしていた。


もちろんのこと二人とも整った顔立ちをしていて、一緒にいるところはとても映える。

クラス中のみんなはこの二人はデキていると確信を持っている。

ある朝、二人が登校してくる前に行われた小さなクラス会議。

議題は『噂の二人をくっつけよう作戦』とお節介な事この上ないものだった。

彼女いない暦イコール年齢の僕は、恋するという気持ちもまだ知らない。

二人をくっつけて何が楽しいのか少し分からなかった。


持ち込まれたのは新型うそ発見器。

ロボット部の皆さんが作った新作なのだそうで、88%の正解率を誇りますがキャッチフレーズ。

88%は信用して良い数値なのだろうか少し心配であるが・・・

彼らが来る間に様々な生徒たちがこの機械を使い、遊んでいたが当たると皆騒いでいた。


「おはよう!何やってんだ皆?」


元気よく挨拶しながらこちらに向かってくる彼。

隣には案の定彼女もいた。


「うそ発見器だって、意外と当たるらしい」

「へー面白そうじゃん」


僕がそう答えると、好奇心丸出しで発見器に近づく彼。

彼女は何も言わずに物珍しそうな目でそれを見ている。


「やってみる?」


クラスメイトの誰かが彼女に提案した。


「え、私?・・・やってみたい!」


意外と気になっていたらしく、可愛らしく返事をする彼女の表情に

クラスの皆はヘロヘロになってしまいそうだった。



「では早速、簡単な質問から。全て『いいえ』で答えてね」

「了解」


ここまでは全て『噂の二人をくっつけよう作戦』の通りだ。

ちなみに質問は大まかに考えただけなので、ムードメーカーの佐々木さんに任せた。



「あなたは女である」

「いいえ」


発見器のライトが赤く光る。これは嘘をついてることをあらわしているらしい。

当たり前だよねと気さくに笑う彼女。


「では、次。貴方は好きな人がいますか?」

「うわ、定番すぎるよそれ。・・・いいえ」


またしてもライトは赤く光った。コレを見たとき、激しく落胆する男子生徒が多く見受けられた。

一方女子生徒たちや他の生徒たちは作戦は順調に進んでいると含み笑いをしていた。

客観的に見ていた僕はこのクラスの異様な雰囲気にただ引くことしかできなかった。


「相手はこのクラスである」

「いいえ」


赤。想定の範囲内である。


「相手はサッカー部である。」

「いいえ」


赤。

彼女は少し驚いた顔をして「もうやだ恥ずかしい」と手のひらで顔を覆った。

容赦ない佐々木さんは尚も質問を続けた。


「相手の髪の毛は金髪である」

「おい、ちょっとそれどういうことだよ!」


声を荒げて叫ぶのは彼。このクラスで金髪の頭をしているのは彼だけなのだから、

自身のことを言っているのは一目瞭然であった。

しかし彼女は構わず「いいえ」と答えた。


クラス中が静けさに包まれる。

ここで初めてライトが緑色に灯って『しまった』。


「大事な幼馴染だけど、そういう好きじゃないの」

「・・・ああ知っているさ」


苦しそうに眉を顰める彼にクラスの殆どが罪悪感に駆られていた。

そしてもうひとつの疑問点である彼女の想い人。このクラスでサッカー部のものは彼以外には誰一人いない。

ここでわかる88%の脅威。


「所詮88%だもんな。ありえないよな、そんな・・・」


と呟いた僕は冷や汗を大量にかいていた。僕に集まるクラス中の視線。

トイレ行って来ると逃げるように教室の戸へと向かうと、待ってと大きな声で呼び止められる。


「嘘じゃないから!」


はっきりと僕の目をみて叫ぶ彼女を見て、皆唖然とする。

おとなしい彼女がこんなにも大きな声を出したことがあっただろうか。

瞬間体中の血液が顔に集中するのを感じた。顔が焼けるように熱い。

こんな感情、初めて知った。そして、金髪の彼を見て自分を卑下した。


だって僕は、


「サッカー部でもマネージャーだ!」






お粗末さまでした。めずらしく、カップリングでも何でもありません。



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