>>天の邪鬼







私の隣を歩く男は終始仏頂面ですたすたと自分のペースで歩く。


漆黒の髪は整髪剤で綺麗に整えられ、通った鼻筋は日本人離れしている。

整った顔立ちからか彼は良くモテる。


無口で彼は殆ど人と喋らない。冷たいところも媚びていなくて良いという

悪趣味な女子が彼に群がる。一方男子には、

『話しかけずらい』『調子乗ってる』

と、彼には友達と呼べる同姓が居ない。


昔からの幼馴染という私を除いて。


「付いてくるな、気色悪い。」

「同じマンションなのだからしょうがないでしょ。」


「はっ。お前みたいなやつは大嫌いだ。」

「そう。」



こんな男も一応私の彼氏である。

私のクラスメイトはよく理解できないという顔で私に聞く。

「よくあんな奴と付き合ってられるよね。顔は良いけど、それだけじゃない?」

「あまり喋らないし、ちゃんと愛されてるの?」


彼女達は私を心配してくれているのだろうが、彼はちゃんと私を好きでいてくれている。



家の近い私は小さい頃からよく彼と遊んでいた。

それは最初は無口な彼にイライラしていた。どんなに話しかけても喋ることはない。

ある日、公園で遊んでいると雨が降ってきた。一緒に遊具の下で雨宿りをしていると、


「ぼくは、うそつきだから・・・きみと、しゃべりたくないんだ。」


私が初めて聞いた彼の声はか細く弱々しい声だった。


「じゃあどうして、うそをつくの?」

「それはぼくが『雨の邪鬼』だから」

「・・・あまのじゃく?」


彼曰く、雨の邪鬼というのは遺伝性の病気で雨の日以外は

どんなに制御しようとしても口から反対のことが出てきてしまうらしい。


「雨のときしか、本当のことがいえないんだ。だから、きみとしゃべりたくない」


きみをきずつけたくないんだ。と言った彼が冗談を言っているようには思えなかった。

だから、分かる。彼はちゃんと私を好きでいてくれる。


「私のこと好き?」


そう聞けば必ず、


「大嫌いに決まっている」


こう返してくる。

言葉とは裏腹に私に降り注ぐ唇の雨は馬鹿正直なほど好きで溢れている。


「私も、もちろん大好きだよ。」


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