>>#7





アオイ



「あまり迷惑は掛けたくないんだ。俺は所詮ガキだから」

「…ごめん」

「謝るなよ、気持ち悪い」


少し俯いてそう言った幼馴染を見て少し、悪い気になった。

樹は大分歳の離れた彼女がいる。当時は塾の講師のアルバイトを

していた彼女は今では立派な女医をしているらしい。


少し抜けている彼女だが、樹の前ではちゃんとしている印象を受ける。

とはいえ、俺も片手で数えるぐらいしか会ったことが無いのだが…


仕事が忙しいなら高校生の身分である彼は彼女の重荷になりえる。

最近では真田という転校生にちょっかいを出しているのを良く見るようになった。


「もしや、転校生に乗換えとか…たらしのシノくん再発とか?」

「それは無いから安心しろ」


そう、原先生という存在が現れてから樹の素行は良くなった。

彼曰く、初恋なんだとか。俺にはまだ分からない感情だ。


「あの、あなた…蒼井君かしら。」

「そうだけど、何?」

「先生が呼んでた。今朝の遅刻の件らしいわ」


初めて聞いた転校生の真田の声。

程よく低く、それでも良く通る声に、―『あの人』の姿を重ねてしまう。

どこか冷めた目をしているところも、その艶やかな黒髪も全て。


「俺、お前嫌いかも」

「でしょうね。私も貴方のこと好きになれそうにないわ」


真顔で答える女。

すれ違い様に彼女に言われた言葉が未だぐるぐると頭の中を嫌に回る。


―――だって貴方嘘をついているじゃない。


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