>>くちびるに残った夏







「暑いよー。暑いよメイちゃん!」

「そんなに言うならそのマフラー取りなさいよ。暑苦しい」


目立つ青い髪をした弟のような存在の男は、この暑い日にマフラーをしたまま。

取るように指摘するが、どうやら「キャラ設定だから取れない!」のだそうだ。

もこもこした青いマフラーを見ていたらこっちまで暑くなりそうなので冷蔵庫から一本アイスを取った。

それを見た彼はそのアイスは自分のだと大声で叫んだが、聞こえないフリをしてひんやりとする棒に噛付いた。

彼もこちらの方までダッシュでやってくると、自分のために一本手に取り、噛付く。


「何この味・・・不味い」

「ドリアンだよ。果物の王様ドリアンのアイス!期間限定のレア商品なのに…」


黄色のそれはてっきりレモン味などの味を連想していたのだが、ドリアン味。

喉に残るような味がどうも好きになれない。

これ以上は無理と、半分以上残っているアイスを彼の口の中に強引に入れた。


「普通においしいじゃない。じゃあメイちゃんはコレを食べなさい。」


自分がやったことと同じようにアイスが突っ込まれ、途端に広がるイチゴ味。

あまり気にしていなかったけれど、この行為は間接キスだ。

そう思ったら急に恥ずかしくなった。絶対に顔になんか出さないけど。


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