>>マーメイド・ダンス
夜、リビングでお酒を飲んでいたら、風呂から上がってきたカイトがやって来た。
一言声を掛けて、何気なく日本酒の入ったグラス手を掛けようとしたら、その前に止められてしまった。
「たくさん飲んだから、今日はもう飲んじゃだめだよ。明日レコーディングでしょ?」
酒焼けしてしまうのか沢山飲んだ後は声の出が良くない。
「僕、メイちゃんの歌声が世界一好きなのだよ。それが聴けなくなったら死んじゃうかも」
「そう・・・ありがとう。でも、すごくお酒飲みにくくなったじゃない」
「それが目的だもの」
ふと、人間に恋をした人魚姫の話を思い出した。人間になるために声をなくした人魚姫。
自分自身を人魚姫に例えるわけではないけれど、もし声が出なくなってしまったら・・・
それは、私たちの存在意義をなくしてしまうようなもの。
「明日、上手く歌えたら何かご褒美ちょうだい」