>>#1
ソメイ
高校生活が始まって1年と2ヶ月。
2年の6月中旬という実に間の悪い時期に転校生が一人やってきた。
普通、転校生が来るときには「大ニュース!転校生がくるぞ!」
などのゴシップが事前に流れてもいいはず。
今回はそのような事はなく実に急で、私たちクラスメート一同は
だいぶ大げさなリアクションを取ってしまったことだろう。
「はい。いつも通り出席をとる前に、今日は新しいクラスメートを紹介します。」
一瞬、クラス中が静けさに覆われた。
そのあとはお分かりの通り、一同絶叫。
中には、女ですか、男ですか!?と興奮する男子生徒も多々現れた。
先生に促され、教室に入ってきたその新しいクラスメートは女の子。
大人しめな印象の顔に黒いふんわりとした髪の毛。
その毛先はお洒落に切りそろえられたボブスタイル。
身長は女の子にしては少し高め、痩せているわけでも太っているわけでもない。
その出で立ちに男子生徒のほとんどが見惚れていた。
「真田葵です。よろしく。」
澄んだアルトソプラノの声を響かせて、彼女は開いていた私の前の席に腰を下ろした。
その顔は実につまらなそうな、淡白な顔をしていた。