>> ライ・ディテクター中
「悪いねェ。それじゃあまた明日。」
ガチャリ。固定電話特有の電話が切れる音がした。
今日、家に遊びに来た総悟はそのまま携帯を僕の部屋に忘れたまま帰ってしまった。
シンプルな青い携帯電話が音を鳴らしたのはついさっき、
2時間ほど勉強して飽きてきたころだった。
自分の着信音ではないその音に少し驚いたが、すぐに奴のだと分かった。
「……もしもし」
「死ね。携帯返せ」
「忘れたのはお前でしょ」
「明日、取りに行く」
明日は、水曜日…だったか。水曜日は短縮授業だったな。
「無理、デート。」
「嘘吐け」
本当だ。しかもお前の学校の生徒だ。
だが決して3Zの生徒では無い。通常クラスの生徒だ。
昔のバイトが一緒だった、頼子ちゃんという女の子。
小柄でまあまあ可愛らしい子である。
どうでもいいが、
「どうせそっちに用があるし、届けに行くわ。」
そして冒頭に戻る。
短縮授業の為、早くに学校が終わる。
本当は本屋にでも寄ってから頼子ちゃんと会うつもりだったが、しょうがない。
そのまま銀魂高校の正門のところで待ち合わせになった。
携帯を渡すために、わざわざ隣町まで。
生糞、自転車はパンク中だったので徒歩で来た。軽いエクササイズにはなっただろう。
―
ちょうど正門に着いたときに学校終了のチャイムがなった。
思った以上に時間が掛かったようだ。
数分後にパラパラとやってくる生徒たち。
他の高校の制服を着た僕を物珍しそうに見ながら通り過ぎていく。
「あ、ヤジ高の生徒さんだわ」
「お前、喧嘩ふっかけに来たアルかっ!?」
そう声を掛けてきた…のか喧嘩を買いに来たのか、目の前には2人組みの女子。
結構な美人とビン底メガネのお団子頭。しゃべり方が特徴的だった。
「いや、ただの人待ち。忘れ物を届けに」
「爆弾とかじゃねーだろーなあ、ああん?」
…絡みづらい。美人はただ突っ立ってるだけで何も言わない。
早く連れ去ってくれと視線を送るがニコニコしたまま何もしなかった。
今や戦闘態勢に入ったのか、両手に拳を作っているお団子頭。
しゃべり方や、髪形。そのたち振る舞いからして連想するのは、中国・少林寺拳法。
笑ってしまいそうなそのキャラの濃さにふと思う。奴は彼女をチャイナと呼ぶ、
「神楽ちゃん」
にそっくりだ。
顔は写真も見たことが無いので知らないが、話を聞く限りでは似ている気がした。
「なんでお前、私のこと知ってるネ」
コクっと頭を斜めに傾げるその女子生徒に
僕は、驚きのあまりこれでもかというほどに目を見開いた。
奴の趣味はすごく、……悪い。