>>この手をずっと離さない





「じゃ、いこうか」


日没が近いのか夕暮れが海岸を朱色に染め上げる。

僕は砂の城を作っている彼女に声をかけた。


堤防の上には「あの人たち」が座っていた。

僕がそちらに向かって大きく手を振ると、女性のほうが手を振り返してくれた。

男性のほうは、相変わらず愛想が悪い。

やはりと苦笑を漏らして、思う。

これからあの人たちには過酷な日々が始まる。

そして、いずれは僕たちも進む道。



不思議と恐怖とか、不安とかそういう気持ちはない。

ふわふわしている彼女はともかく僕はやるべきことがはっきりしている。


「どうしたの?追いてっちゃうよ」



彼女を独りぼっちにしないこと。

幼馴染として生まれてきた僕たち。小さいころから君の隣は僕がいればいいんだ。

あの人たちが教えてくれた、大好きな人と共にいること。



この悲しい輪廻を止めること。これまで何人の悲しみのうちに消えていった命の重みを抱えて……


僕たちはそのために共に生きていく。


「ゆりっぺ、愛してるよ」

別れ際、スキップ交じりに歩く彼女の腕を引いて囁く。

「あたしもあいしてるよ」


満面の笑みでそう返す彼女はきっと僕の言葉の重みを知らない。



最期に君は僕と居られて幸せだったと思ってくれるだろうか。


今は繋いだこの手が離れないようにきつく握っておくこと。

それが僕の役目なんでしょ?もうひとりの僕。

堤防に座る同じ記憶を持った男を仰ぎ見た。





あとがき
AIRのラストが分からなくて、
何度もLボタンを押した記憶があります^^;
結局この解釈で合っているものなのか・・・苦笑



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