>> 最期はきっと短刀で





どんなにお酒が強くても、そこまで飲めないような振りをする。

お酒は好きなのだが、宴会の雰囲気でがつがつ飲むのは好きではない。

もっとゆっくり、じっくりその味を楽しみたいから。



「総ちゃん、全然飲んでないじゃない。もっと飲もう?ほら、鬼嫁持ってきたよ」

「十分飲んでます。今はちょっと休憩。」



休憩とは名ばかりで、グラス満杯に注がれていた焼酎はそこまでおいしくはなかったので、

土方の持っている鬼嫁と手元にあったものと交換した。



「おい〜。瓶とグラスじゃあ、等価交換にはならないぞ〜」



これだから酔っ払いは嫌なのだ。ただでさえウザいのにと、土方の口に割り箸を突っ込みたい衝動に駆られた。

ほれほれと私の頬をつつく酔っ払い。近くから香るお酒とタバコの匂いに酔ってしまいそう。

もうすでにほろ酔いの域には達しているはずなのに。



頭がクラクラする。

胸が高鳴る。アル中にでもなってしまったのか、自分は・・・

朦朧とする視界と、香る不思議な匂い。

気づけば、グッと自分の左手が土方の首に掛かっていた。

まるで首を絞めるかのようにその手に力が入る。



瞬間、土方の顔が変わる。



「総ちゃん。飲みすぎだ。本当に休憩したほうがいい」



ふわりと私の腕に手を乗せる土方。

刹那、目の前にある大きくもなく小さくもない切れ長の目に吸い込まれそうになる。

その下に伸びる太い首に掛けていた手の力が抜ける。本当にこの男は気に入らない。



「立てるか?」

「立てない」



本当は自力で立てる。

なんとなく、立ち上がりたくなくて、座っていたくて。

合っているその視線を外したくなくて。

それでも土方は私の腕をつかんで立ち上がらせた。なんとなく心の中が涼しくなった。

その代わりに掴まれ触れられた腕の部分が熱い。



「歩けるか」

「歩けません」

「よし、歩けるな。支えてやるから自室に戻れ」



大きな身体に支えられ、わいわいと騒ぐ大広間の横を通り過ぎる。

「あれ〜副長お持ち帰りですか〜」と茶化される。

にへらと笑う泥酔した原田にすっと中指を立てた。

いつもなら、ひっと息を飲む原田だが、今はふにゃーとした顔で首をかしげている。

明日、記憶があってもなくても罰を加えないとならないようだ。



「ほら、着いたぞ。布団ぐらいは自分で敷けるだろ」



肯定の言葉と共に頷くと土方はじゃあ、おやすみと私に背中を向けて歩き出した。



「土方さん」



小さな声で呼び止める。きっと聞こえはしない。だが、彼は「んだ?」ゆっくりと振り返った。



「土方さんに手を掛けるのは、私だけだ。異論は認めない。」

「そうか。それじゃあその時はよろしくな」



くいと口角を上げた土方に、にやりと笑いを返す。

今度こそひらひらと手を振った土方は大広間に戻っていった。



「はっ。おかしいだろ」



自分でも喉から出たのか出ていなかったのか分からないぐらい小さくかすれた声だっただろう。

上司に手を掛ける部下がどこにいるというのだろうか。

歪んだこの感情に混乱しつつ、きっとアルコールが入っている所為だと判断した。





(いつかは私が殺す。)

(でもそれは今じゃない)




総ちゃんは酔うとヤンデレになるタイプだと思います←なんだそりゃw
未成年の飲酒は違法ですのでおやめください。


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