>> 血に染まる





「私が守りたい人は近藤さんだけだから、」


毎回そう言ってた沖田が
あれだけ近藤さん以外なにも見えてなかった沖田が

今、俺の目の前で泣いている



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「今日のはちょっとやばいかもな、総ちゃん」
松屋と攘夷志士が繋がってるなんて情報をザキが持ってきたのはほんの二日前だ

「そんな呑気な振る舞いじゃ刺されますよアンタ」

「へぇへぇ、相変わらず手厳しいね総ちゃんは、」

「だって、今回多いんでしょう?」

「なに、俺の事心配?」
なんて言ってさりげなく後ろから沖田の腹に手を回せば

「まさか」
そっけなく手を払われた


「じゃ、先行くんで」

少し目配せさせ沖田は襖の向こうへ消えていった


「やっぱ手厳しいわ、総ちゃんは」

払われた手を然程痛くもないくせに擦る俺の姿を沖田が見ることはなかったけど
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 ̄ ̄ ̄

この生温いやり取りがほんの数時間前だなんて誰が思うだろうか、
いま目の前の光景とは違いすぎて、

数時間前に沖田に払われた手は血に濡れて、黒いコートにまでどす黒い血が滲む始末


「ほら、早く近藤さんのとこ行けよ、」

目の前の沖田は何もいわない、
そ、っと沖田の頬を擦り涙を拭いてやる、俺が触ったからその頬には血がついたけれど、

「以外と泣き虫なんだな、総ちゃんは、」

まだ何も言わない沖田に俺は最後の言葉を掛けた


「近藤さん守れるのはお前だけだから、」


その言葉にはっとしたように目を開ける沖田
だがそれも一瞬その顔はさらに歪んだ


「私が守りたい人は近藤さんだけど…ッ!アンタには死んで欲しくないんだ、」

「沖、田」

ぼろぼろと涙を流す沖田の頭を撫でてやる

「死なないから、大丈夫だから。お前は行け、あの人を失っては駄目なんだ」

わかった、と気のない返事をした沖田は立ち上がり、近藤さんの元へと走っていった


その姿を確認して俺は目を閉じる

すると今度は激しく名前を呼ばれた。目を開ければ俺を起こそうとしてる永倉がいた
「なにしてる?!」
「沖田さんと約束したんだ、あなたを死なせない、って」

「置いていけ永倉、」

「嫌です!」


「あなたが居なくなったら困る人が多すぎます!」

「お前だって二番隊隊長だろ」

話してる間にも永倉は俺の身体をほぼ起こしあげていた

「すいません土方さん、俺は沖田さんが悲しむのは見たくないんです」

「おまえ、」

「大丈夫です、土方さん一人支えるくらいなんの支障もありません」

「…悪ぃ、手借りるぜ」

「はい」


騒ぎが先ほどより収まった現場には沢山の人―否、人だったものが転がっている

「近藤さん達はこの先です」

待ち合わせてあるんです、と笑う永倉を二番隊隊長にしてよかった、なんてぼんやり思った



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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「トシ、無事だったか」

あぁ、まぁなんとか、と永倉の肩を借りながら近藤さんの問いに答える

「あの、近藤さん、沖田さんは、」

永倉が遠慮がちにきく、やっぱコイツは沖田を気にかけてるんだろうなぁ、なんて分かりきった事を思った

「土方さん、生きてましたか。」
そんな事を思った矢先、沖田の声がした。トゲのあるトーンに比べてその顔は、
「なんて顔してんの、そーちゃん」

いまにも泣き出しそうな、

「うるさいっ」

少し照れたような

「そんな総ちゃんも可愛いよ」

そんな風に笑うコイツを初めて綺麗だと思ったんだ。

「うるさいっっ!」


永倉には悪いけどこりゃ簡単にはあげられそうにない、



「よ〜し、じゃあ帰るか、なぁトシ」

「そうだな、ほら永倉、沖田いくぞ」



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