>> 寒さと、りんごと、微熱と・1
「銀ちゃん!!見るアル!」
朝から神楽のテンションの高い声で起こされる。
珍しいから何かと思い神楽の指さす窓の外へと目をやる。そこには一面を飾る真っ白な雪。
雪ごときで起こされるなんて低血圧の銀時にはたまったもんじゃない。
「あー。雪だねー。神楽ちゃん遊んできたら?雪で遊んでおいでよ?」
これ以上騒がれては困る、てか寝かせてくれ、という思いも込めて神楽に外へ行く事を勧めた。
「わかったアル!私が居なくてもちゃんと遅れず会社に行くのヨ?」
「なにその 妻ちょっと留守にします。 みたいな感じ。
大丈夫だから、銀さんそんな十代前半の餓鬼に心配されるほど腐ってないから」
じゃー行ってくるアル〜!
元気な声が響いたのと同時に銀時もまた夢の世界へと飛び立った。
銀時に追い出さ…半ば自主的に家を出てきた神楽はいつもの散歩コースをるんるんと歩いていた。
定春も連れてくれば良かった、とまだ部屋で寝ていた愛犬を思い出す。
大分積もってる雪は簡単に神楽の足を濡らした。ついでに言うと相当歩きにくい。
雪に足を取られてなかなか進めない神楽だったが、気にせずせっせと足を動かす。
気付いたら川原まで来ていた。
川一面に積もる雪はどこまでも真っ白で、その下で凍ってるであろう川の上だって今なら歩けそうだ。
「うわっ?!」
よそ見をして歩いていた神楽は深みにはまりそのまま川原を転がり落ちた。
幸い雪が多かったせいか川に投げだされる事はなくその手前で止まった。
「大分濡れちゃったアル…」
雪に埋まった状態で呟いたそれは空へ消えた。
冷たい雪とはうらはらに照り付ける太陽はぽかぽかと暖かくなんとなく眠気を誘う。