>> 午前ゼロ時





年末年始。忘年会に新年会が行われ、1年のうち最も治安が悪くなる時期。



そんな時期の大晦日、借り出されるのはやはり真選組。

極寒の中で見回りと称してサボるのはやはり俺、沖田総悟。



共に巡回していた山崎を撒いて、一人で寂しく散歩をしている。





だいぶ歩いているとスナックお登勢の看板と、なにやら騒がしい音。

きっとそちらでも何やら宴会ごとでもしているらしい。



自分は見回りで忙しいというのに。と(サボってはいるが)悪態をついてそこを通り過ぎたとき、





「沖田?」





名前を呼ばれて振り向くと、ほんのり赤い顔をしたチャイナ娘が店の前に立ち、こちらを見ていた。



そっちは宴会?なんて返事しながら近づくと微かな酒の匂い。





「お前、酒飲んだのかィ?」そう問うと、



「・・・・飲んでないアル。」



しばしの間と返答。肯定とみた。



しかし、目の焦点も合っているのでそこまでは飲んでいない様子。

チャイナは酒には弱くない様だ。足元もちゃんとしている。

きっとほんの出来心で飲んだぐらいだろうと推測。



「未成年はお酒飲んじゃいけないんですよー?チャイナさん」

と、皮肉交じりにそう言うと、お前も酒飲むくせにと反撃を食らった。



図星をつかれたので話題を変えることにした。





「旦那は?」



「キャサリンに飲まされすぎて潰れてるアル。全く困った奴等ネ」





そんな旦那の姿が想像できて面白い。



少しばかりたわいのない話をした後、沈黙。

普通だったらこいつと話なんてしないけれど・・・

いつもなら所かまわず直ぐに戦闘態勢に入るのだが、

今日はそんな意欲は湧かない。きっとこいつもそうなのだろう。黙って夜空を見上げていた。

後ろの店の中がより一層騒がしくなった。それと対照にこちらは静かになるばかり。



そんな静けさを破ったのはあいつの一言。



「あけまして、おめでと・・・アル」



チャイナは俯きながらぼそぼそとそう言った。



チラリと腕の時計を見ると、丁度0時。

たいした腹時計を持っているなと関心しながら、

あいつの頭にぽんと手を乗せて、一言。



「おめでと」



すぐに手を退けて彼女に背を向けて立ち去る。

だいぶ離れてから振り向いて様子を伺うと、彼女は以前俯いたまま。

しかし、胸の前の華奢な小さな手のひらには、

俺が先ほど頭に乗せた1箱の酢昆布があった。





(あれ、てか俺名前で呼ばれなかった?)
(酢昆布の寄贈なんてヤツらしくないアル)





あとがき

遅れましたが、正月ネタです。
2人が大人しいのは正月マジックです。
なぜ沖田君が酢昆布持っていたのかも謎です。

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