>> すべては暑さのせい・下
と、いうより何で私がここに?そんな疑問を胸に抱えつつ、やはり無視を決め込む私。
こんな所にこいつと2人で居ることすら、想像もつかなかったのに。
なんでこいつはこんなにも優しいのだろうか。なんかへんな物でも食べてしまったのだろうか。
どことなく調子が狂うので、一眠りすることにした。
「寝るアル。」
そう隣の男に告げると、彼はさっと私の番傘を適当な位置にずらした。
傘のつくる陰が丁度いい感じに眠気を誘う。
なんだかこうしてるのも心地がいいし、悪くはないな。とか思ってみたりして。
・・・・・・・・・寝れないんだけど。
一応目は瞑ってはいるものの、気が散って眠れない。眠気は確実にあるのだが、寝れない。
寝返りを体をずらし、頭の中を真っ白にしようとするが、上手くいかない。
はっと気がついた。隣にはあの男がいるのではないか。
相当落ち着きがない女だと思われなかっただろうか。
今更ながら、そんな心配をした。
恐る恐る番傘の下からそいつの様子を伺って私は息を飲んだ。
あいつが、・・・・・・・いない。
定春は呑気に体を丸めて私の近くで寝息を立てている。
居ないと分かると、妙に気が抜けた。
気が楽になったので、なんだか今度はちゃんと寝れそう。
そして、私は突如に誰かに頭を撫でられる感覚に目は開けなかったが眠りから覚醒した。
銀ちゃんほど大きくはない手の平、新八ほど柔らかく、暖かくもないそれは
2人のものよりも大きく違っていて、それでも何故だか気持ちよかった。
うっすら目を開けて、その人物を確認してみると、想像していた人物を一致した。
薄い色素の髪を風になびかせて、右手は団子を持ち、左手は私の頭に。
目線は遥か頭上の空の一点だけを見つめていた。
初めて、異性を綺麗だと思った。そんなこと本人には決して言わないけど。
また眠気が襲ってきたのでうっすらと開けた瞼をがっちりと閉じて、
ゆるゆると撫ぜる彼の左手に意識をゆだねた。
(静かにしてたら、普通に可愛いのに。なんて、これっぽっちも思っちゃァいねェからな!)