ごめん。
ごめんな。
彼は嗚咽の合間に謝罪を繰り返す。
どうして謝るの、謝るのは私の方だわ。
今までたくさん迷惑をかけたものね。
ああ、でもお互い様かしら。
彼の涙の雫が落ちて、私の頬を愛撫するかのように伝う。
彼の顔がぼんやりと霞んで歪んだ。
もう駄目みたい。
血が止まらないの。
行き場のなくした血液が、地面に赤く跡を残していく。
私を抱きかかえる彼の衣服にも染みを作っていた。
もうすぐ、死ぬのね、私。
案外冷静でいられるのは、きっと彼が顔じゅう涙で濡らして、慟哭しているからね。
最期に見るのが貴方の泣き顔だなんてね。
ねえ、笑って。
いつもみたいに、白い歯を輝かせて、小さなえくぼを私に見せて。
眠気にも似た感覚が私を襲い、ゆっくり瞼を閉じる。
遠くの方で彼が叫ぶように私の名前を呼ぶのが聞こえた。
瞼に焼き付いた彼の顔は、酷い泣き顔だった。