「君は美しくなんてないよ。」
頭を鈍器で殴られた気分だった。
その言葉は容赦なく私を突き放す。
不躾に言い放ったのは、同じクラスの冴えない男子だった。顔立ちは普通。
街で見かけても、5秒後には忘れてしまうような平凡な顔。
黒い髪は寝癖で少し跳ねていて、長い前髪は目を覆い隠すように流れていた。
制服を着崩す訳でもなく、かと言ってシャツのボタンを1番上まで留めるような馬鹿みたいに真面目でもないタイプ。
背も低くもなく、高くもない。
平凡。普通。その言葉達は彼のためにあるように感じた。
美しくなんてない、初めて言われたその言葉。
今まで、蝶よ花よと育て上げられてきたし、私は自身を美しいと自負していた。
しかし、それは表面上の話だ。
つまり外見。見た目。それが美しいか、そうでないか。
人より秀でた顔立ちで得をしたことだって確かにあった。
それは私だって断言する。
でも、誰も私の中身を見てくれやしない。
皆望むのは中身なんてない空っぽの私。
まるで美術館に飾られる壺だ。
中身なんて必要ない。
私は綺麗な顔で笑ってさえいればいいのだ。
この歪んだ感情を押し殺して。
青白いアンティークドールのように。
それがどうだ。
やっと自分が認められた気がした。救われた。
この平凡な彼によって。
そうだ。私は美しくなんてない。
美しくなんてないのだ。