ジャッカル



お前は俺のことをお人好しの苦労人だって言ってたが、それはお前だ、名前。
いつも見えないところで皆のフォローをしていたことは知ってるんだ。
俺たちには当たり前のように手を貸すくせに、お前は全てを上手に隠して、誰にも手を貸させないことも。
なあ、名前。
お前は器用なやつだと思っていたが、本当はどうなんだ?

「ジャッカルー!次は俺とやろうぜい!」
「え?ちょっと待て俺は今真田と試合したばっか...」
「お前体力あるじゃんちょっとくらいいいだろい!」
「...仕方ねぇな」
「ジャッカル先輩!その次は俺とやって下さいよ!」
「赤也、」

いつもなら余裕なのに、その日の俺はひどく疲れていた。
少し体調が悪かったせいだと思う。
誰にも言っていなかったからこの二人も当然知らなくて、元気いっぱいに俺にラケットを向けてくる。
結局散々二人の相手をした俺はへとへとになって、ちょっと着替えると言い訳をして部室に戻った。
ベンチに座って休む俺にタオルとドリンクを持って来てくれたのは名前、お前だったな。

「名前、」
「無理するなよ。今日はもう休んだ方がいい」
「な、何で知って...」
「何となくな。幸村には言っておいた」

一人で帰れるか?と言った名前の顔は本当に優しくて、からかわれるのには慣れていてもこんなに優しくされるのには慣れていない俺は少し焦って「大丈夫だ!」と言ってしまった。
その日の帰り道、やっぱり名前と一緒に帰りたかったとぼんやり思った。
なあ名前、お前はあの時何となくって言ったけど、本当は。
本当は、自分もすぐに隠す癖があるから分かったんじゃないのか?
名前がいなくなっちまって、皆心配でたまらないって顔してて。
俺だって同じで、名前のことばっかり考えて。
器用な奴だって思ってたけど、もしかしたら本当は。
ずっと俺たちに何かを気付いてほしくて、でも言えなくて、それで姿を消してしまったなんてことじゃねぇだろうな、なんて。
なぁ、どうなんだ、名前。
いつもみたいにさらっと、俺の考えを見抜いてくれよ。
なぁ、名前。
早く帰って来い。

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