幸村(※シリーズ全般シリアス注意) |
俺たちの夏が、全国の決勝が終わったあの日。 名字名前の姿を見たのは、あの日が最後だった。 「...お疲れさま、」 なんとなくおかしいなとは思ったんだ。 天衣無縫の極みへ辿り着いた越前リョーマに負けてベンチに戻ってきた俺に、名前はタオルとドリンクを差し出した。 いつもなら、用意して置いておくだけで手渡しなんて絶対にしなかったのに。 「俺は忙しいんだからタオルくらい自分で取れ」って言ってたのに。 隣で蓮二も驚いていたけど、その時は最後だから特別なのかなくらいにしか思っていなかった。 だから気付かなかったんだ。 「とうとう終わってしまったんだね、俺たちの夏が」 「ああ。赤也...来年、頼んだぞ」 「っ、はい!」 「泣くな赤也、卒業まではまだあるんじゃから」 「そーそー!部活には皆顔を出すと思うぜい?マネージャーだけど名前もな!」 気付かなかったんだ。 何も言わない名前を皆が振り返った時の、俯いた名前の表情に。 「......みんな、ありがとな」 顔を上げて少し曖昧に微笑んだ名前の、その言葉の意味に。 それから、名前は忽然と姿を消した。 学校にも、コートにも、名前の住むアパートにもいない。 どこかに、消えてしまった。 ずっと一緒にいた俺たちに、何も言わないままで。 ねえ、名前。 君は俺たちをずっと支え続けてくれていたけど、俺たちはどうだったかな。 君を支えられていたのかな。分かってあげられてたのかな。 ねえ、名前。 どこに行ってしまったの、名前。 back |