大学生幸村の恋人



私には、美人な恋人がいる。

「愛称、今日泊まっていい?というか行くね」

友達と講義を受け終わって講義室を出ようとしていたら、入れ違いで入ってきた精ちゃんにさらっとそんなことを言われた。友達にからかわれないはずはない。精ちゃんめと思って振り向いたけど、一緒にいた柳君がたしなめてくれているようだったので――なんて出来た人だ柳君――まあ許してあげることにする。このちょっと強引なところのある彼が、付き合って一年ちょっとになる私の恋人。見た目は女の私がちょっと自信をなくすくらいの儚げ美人で、でも意外と男らしい鍛えられた体つきで(テニスを長くやっているみたい)。強引でワガママな時もあるけど優しくて世話焼きな一面もあって、でもびっくりするくらい手のかかる時もあって、とにかく一緒にいて飽きることなんて全くない。

「ほら、今幸村くん通ったよ!」
「嘘、どこどこ?」

女の子たちのそんな声が聞こえてきてももう驚かなくなってしまったくらい――だからと言って何も思わないわけではないけど――精ちゃんはモテる。中学や高校時代のその手の話を聞いた時は上手にはぐらかされたけれど、柳君から私が精ちゃんの初めての恋人だと聞いた時はとても驚いたっけ。とっかえひっかえとまではいかないにしてもそれなりに慣れているような感じがしてたから。私はお付き合いをすること自体は初めてではなかったけれど当時は手をつないだり一緒に帰ったりするくらいで、泊まりにくるような仲になったのは初めてだった。

精ちゃんといると、ずっと一緒にいても苦ではない。寧ろいくらでも一緒にいられるくらい居心地がよくて、落ち着ける。楽しいことをすれば友達みたいにはしゃげるし、でも触れられるとやっぱりどきどきするし、嬉しい。精ちゃんは大学の先輩からも後輩からも、もちろん同級生からも絶大な...それこそ芸能人並に人気がある。どうして私なんかと?と思わなくもないけど、まあそんなことがどうでも良くなるくらいには――何だかんだ言いながら「夜ごはんどうする?」ってメールするくらいには、私は精ちゃんが好きだ。メッセージを送ってからすぐに専用の着信音が鳴る。

"愛称も今日の講義終わったよね?前言ってたファッションモールに行って、そこで食べて帰ろうか"

...さらに付け加えると、メールを見て今すぐ精市の胸に飛び込みたくなるくらいには、私は精ちゃんが好きだ――つまり、夢中ってことなんだろうね、精ちゃん。

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