世の中さ、すっげー不公平だなって思うことがたくさんあるがんね。
おれ頑張っちょーのに。
なのに、兄ちゃんしかみてくれん。
兄ちゃんってさ、恰好いいんだよ。勉強できるけん進学校に通っちょーし、運動だってできる。バスケも兄ちゃんが教えてくれたけんね。
これで性格最悪とかだったらよかったのに。
兄ちゃんには本当かなわない。
だって、すげー恰好いいんだぜ。
でも、おれだってみてほしい。
兄ちゃんには届かんくても、おれなりの過程があーけん。
「結果のない奴に興味はない。本当、恥さらしな奴だ」
おれさ、頑張っちょーのに。
その冷たい一言が痛くて、つらくて、そのまま兄ちゃんにぶつけた。でも、兄ちゃんは苦笑を浮かべて「ごめんな」って。
いっそのこと空でも飛んでみようかな。
重く、でも軽い気持ちで立ち寄ったそこには、遠くを見つめちょー兄ちゃんがおった。
「期待に応えようとするのって、意外とキツイけんねー」
ああ、そうか。
そうだがんね。兄ちゃんって優しい男だったがん。
いつもとまるで違う眼の色はきっと、おれが何を言っても受け入れてはくれんのんだろうな。
「おれも。一緒だな」
これが、精一杯の救いの言葉。
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