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(1)


トイレにあるのは、見たことのない"コケシ"。
ひとつは窓際に立ててあって、もうひとつは床にコロンと転がっている。なんだろうと思いながらも用を足すべく来たことを思い出した。
一刻も早くこの個室から出たいという衝動に刈られ、ドアノブに手をかけるも視線は"コケシ"から離せないでいる。



「やっぱり気持ち悪い」



口に出すと、不気味さが増した気がした。両手にそれぞれひとつずつ持つと、ガコン、ドアにそれをぶつけながらも足早に台所へと向かう。



「お母さん!」



投げ掛けた助けに彼女は反応し、首をかしげる。
どうしても、不気味だから、気持ち悪いから、と主張する。
仕方がないと言わんばかりの顔で彼女はごみ袋を拡げる。そこへ押し込むようにふたつに力を加える。……よかった。棄てただけのことだけど、何となく安心。
今朝の出来事などすっかり忘れてしまったお昼過ぎ。


足の重たさを感じつつもトイレに腰かける。と。


目の前にはふたつ並んだ"コケシ"が。










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