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寝ぼけ眼をこすりながらリモコンの電源を押す。
静まり返っていた部屋にニュースキャスターの声が響きだす。



『―――に住む――さん16歳が――――自殺とみて捜査を――』



流行なのかと思わせるほど、その言葉は住所と名前を変えて毎日のように聞こえてくる。
赤の他人のことだけどその内容だけはどうしても気になる。



どうして、逃げないのだろうか……と。



きっと『自殺をしよう』と意気込んで行動に移すひとはいないのだろうけど、それでも結果、行動してしまうひとの気持がわたしにはわからない。




2時限目からの講義に間に合うように仕度をしながらも、脳内では疑問が飛び交い不思議が増していく。





……飛び降りって流行なのかな。



さらさらと流れる川を目の前にいまにも飛び込んでしまいそうな青年がひとり。



いつだか読んだ話にも、橋の上から飛び降りようとする女の子が登場していたっけ。
そんなことを思い出しながら青年の動きを凝視する。



人通りの少ないここでは、青年の存在に気付けているのはわたしだけだと思う。


飛び込んでしまおうか、やっぱりやめようか、葛藤している姿が背中から見て取れる。
どうするのだろう。
もし、飛び込んだのなら、わたしは第一発見者、もしくは目撃者となる。


そんなことになれば講義には遅れてしまうし、その先に影響しても困る。


なんて自己防衛を張りつつもその場から離れられないわたしは足を進める。



「ねえお兄さん」



声を発すれば、ビクつく青年になぜか悲しくなる。
思い詰めているようなその眼に涙が出そうになる。



「ねえお兄さん」


もう一度、ゆっくり話しかければ。


「なあにお姉さん」


掠れた声で返ってくる言葉。




「一緒に現実逃避しない?」




どうして、逃げないのだろう、という疑問は捨てた。
それを、死ではないところに逃げよう、という答えに変えてわたしは青年の手を取った。















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