沖田『そのペロペロキャンディおくれ』

かぶき町公園入り口にて。

午後13時5分前、時計を見ながら待ち人を待つ。

不意に感じる敵意とも取れるよな視線。

ギギギッと振り向く先に。

!!!

ヤバイ、目が合ってしまった。

5メートル先にいた彼は私と目が合うと丸い目を更に丸くした。

それはあたかも獲物を見つけた時の目。

捕まる前に、と立ち上がった瞬間に。

「待て」

既に敵は私の目の前にいる。

どんだけの瞬発力?!

「…コンニチハ」

「こんにちは、じゃねェや。この間はとっとと逃げやがって」

真っ黒な笑顔で見下ろされて逃げるのを観念した。

銀さんのバカ、だからこんな目立つとこで待ち合わせなんてイヤだったんだよォォォ!!

「旦那はどうしたんでィ?」

歩き出そうとする私の手を掴み、何故か自分と手錠をつなぎ出す。

「今から待ち合わせですけど?沖田さん、何やって」

「待ち合わせ、って何か付き合ってるみてェじゃねェか」

「違います!!私はただの万事屋の従業員!!今から依頼人のとこに一緒に、って沖田さァァァん?!」

ガチャンと締まった手錠は彼と私の手をしっかりと。

「まァ、積もる話もありやすし、この間みてェに逃げられると困りやすから」

フッと爽やかに笑うけど、普通逃げるよ?

初めてのデートでいきなり首輪つけられるとこだったんだものォォォ!!

『真選組の沖田さんに告白し、本日より付き合うことになりましたッ!!』

銀さんに真っ赤になってそう報告すると。

『…へェ?』

銀さんは引きつって青ざめてた。

その理由は初デートで明らかになったけれど、あの時説明して欲しかったよ、彼が外見とは違って相当のドSだってこと!!

「…沖田さん、やっぱり私」

「ア?アレですかィ?オレの外見にだけ惚れてた、とか今更そんなこと言うのはナシでさァ」

「…」

先回りされてしまった…。

「私、そのお付き合いとか今までしたことなくって、だけどそのいきなり首輪って」

「お前のために特注した首輪でィ」

「いらないからァァァ!!!」

今まで私が沖田さんに抱いていたイメージが次々と崩れていく最中。

「あれェ?ナマエと沖田くんじゃん」

銀さんとすれ違って『タ・ス・ケ・テ』と口パクで助けを求める横で。

「旦那ァ、いい天気なんでナマエとデートでさァ。この間は逃げられやしたんで今日はやり直しでさァ」

と銀さんに向かって手錠で繋がれた手を見せると。

「…おお、アチィな、総一郎くん。…あんま最初から無茶しねェでやってくれな。その子経験ないから」

「って、銀さん〜!!仕事、仕事!!置いてかないでェェェ」

じゃあと手をあげて颯爽と去っていく背中に追い縋っても振り返ってもらえることもなく。

…後で冷蔵庫の中にあるいちご牛乳全部流してやる、と決心した。

「お前、どんなイメージをオレに抱いてたんでィ」

「え?」

聞かれて沖田さんの方を見たら、いきなり口の中にズボッと何かを入れられる。

「ッ?!」

甘い?!

慌てて口からはみ出ている捧を手にして口から出すと、どうやらペロペロキャンディー。

「うめえだろ?」

フッと笑ったその顔が眩しくて思わず目を反らす。

ドSなのに、爽やか。

いつもかぶき町の中ですれ違う時もその爽やかな風貌を遠目に見ては恥ずかしくて俯いてた。

かっこよくて優しそう。

…そう、私の勝手な思い込み、沖田さんは何も悪くない。

「オレァ、誰でもOKじゃねェんで」

「え?」

「…告白してきたのがお前だから付き合ったんですぜ?」

「沖田さんっ…」

「面白そうだったからでィ、オレ好みの目ェしてやがるし」

あ、また黒い笑い、なのに。

…私だったから、なんて言われるとすごく嬉しくなる。

「なァにニヤケてるんでィ」

バチンと額を弾かれて膨れたら、沖田さんはケラケラ笑って。

「今日のところは離してやりまさァ、仕事があるんだろィ」

ようやく手錠を外してくれた。

「その代わり、ペロペロキャンディおいてきなせェ」

口に含んでいたキャンディを無理やり引っこ抜かれて絶句するのは。

それをいとも簡単に沖田さんが自分の口に突っ込んでしまったからで。

…間接キス、なんですけどォォォ!!!

真っ赤になった私の頭をグリグリ撫で回して。

「じゃァな、また連絡すらァ」

その笑顔がやっぱり眩しいから素直に頷いた。

…きっとまた後悔しそうだけど、と苦笑して。



コトノハ管理人まりも様へ、恋愛中毒管理人ゆみよりお祝いの言葉&感謝の言葉

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