三日前、江戸の街を散策して買ったお土産は一人に対してのみ思いの外不評だった。

おかしいな、これでもいろいろ考えたんだけど。そう言えば高杉は思いきり舌打ちをして。

差し出していた私の手からそれを奪い取るようにひっ掴むと、ドスドス音を立てて去っていった。

…え?なんなの、アイツ。


「決めた。今度はトカゲの干物買ってくる」
「え?どこに売ってるでござるか、そんなもの」

江戸に停泊中の船の中、私は万斉と休憩室でお茶を飲んでいた。この間のお土産の中には江戸で有名なお菓子もあって、今は二人でそれをつまんでいるところ。あ、ちなみに同僚のまた子は現在任務で船にはいない。

…うん、実に静かで良い。

「で、何を?」
「なにが?」
「晋助へのお土産に決まってるだろう。何を渡した?」
「…何をって。万斉、アンタがあんなこと言うからさァ、」

ニヤニヤと楽しそうに笑う目の前の男を睨み付ければ怖い怖い、と両手を挙げる。いやいやどこが。完璧に楽しんでるだろが。ハァ、と漏れた溜め息。万斉はまだ、ニヤニヤと私のことを見てるから。

三日前。勝手に船を降りて観光をしていた私にまた子から連絡があったあの日。

さすがにマズイと思って万斉にしたメールの内容はこうだ。高杉の機嫌、どうやったら治るかな?

すると彼からものの数分も経たぬ内に返ってきた返事は、物で釣ってはどうか、だったから。

フイ、と素っ気なく。煙管の葉っぱとだけ言えば、万斉はなるほど、と妙に納得して。

「全く、晋助も素直じゃない」
「どうだか」
「…いい加減普通に接したらどうだ?」
「…普通って何?めーまいがーするほど〜、」
「…ハァ。神無も大概素直じゃないでござるな」

溜め息を吐いて紅茶を口に含む万斉を横目で見ながら、私も自分のそれに口をつける。

素直じゃないなんて言われたところで今更なれるもんか。

ここ数年、あっちがまともな対応しないんだもん。私はそれ相応な対応で返してます。大人な対応してます本当。

「…おい。テメーら何してやがる」

地を這うような低い声。振り返ればそこには高杉がいて。

あ、いたの。とつい冷たく言ってしまえばもういつも通り。彼は憎々しげに私を見て舌打ちするとその場から消えてった。

…やっちまいました。

「あーあ」
「…万斉うるさい」

後悔先に立たず。まさしくその言葉がうってつけ。…やっぱり原因は私かもしれない。そう思うのは去っていった高杉が寂しそうな顔をしていたように見えたから。

(…気のせいかもしれないけれど)

end

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