夢を、見た。そこには今よりもちょっとだけ若い銀時と、小太郎と辰馬と。それから…変わらない、晋助がいて。私達はもう一度あの時代をやり直す。辛くて、苦しくて。だけど、ほんの少し幸せだったあの時代を。



「…あ、れ?」

私、あのまま寝ちゃってた?ゆるりと目を開けて一番に目に入ったのは、ぼやけた白い天井。ついさっきまでそこに居たような銀時の姿はもうなくて。しまった…ちょっと横になるつもりだったのに。

せっかく来てくれてたのに悪いことしちゃったな、なんて。そう思いつつも当たり前になりつつある彼の存在に少しだけ救われてるのも事実で。よっこらせ、と上半身を起こしてみる。相変わらずぼやけた視界が何だか以前にも増して狭まって来ているみたいで。あー…私また目悪くなっちゃったのかなぁ、なんて溜め息を吐いた。

最近、どんなに近付いて見ても誰の顔だかハッキリ区別が出来なくなった。病気の進行が進んでるんだろうな…今じゃ、誰だか判断するのに声と雰囲気だけが頼り。だからなのかな…たまにすれ違う人から彼に似た匂いがする度に。もしかして、そこに晋助がいるんじゃないか?ってそう思っちゃうから。

「…会いたい、なぁ」

こんな欲が出ちゃうじゃないか。会えるわけないって…そんなの分かってる。だけど、たまにとてつもなく会いたくなるの。ねぇ晋助…アンタは今、国中から指名手配されてる大悪党なんだよね。

だけどね、私は知ってるよ。国を憂いていたアンタだからこそ選んだ道だってこと。そして、そんなアンタに惚れた私は。いつこの世からいなくなってもおかしくない…ただの、なんの取り柄もないちっぽけな存在だってこと。ちゃんと、ね…全部全部、分かってるから。

「…っしん、すけ」

名前を呼べば少しだけ、気が紛れる気がした。銀時の前じゃ呼べなくて、誰の前でも呼べなくて。一人で、一人ぼっちで辛いときに。その名前を呼べば隣に彼がいてくれるような気がして。

「どこに、いるの…っ」

…ねぇ、晋助。アンタはどこにいっちゃったの?私の夢の中の晋助。私に愛を囁いてくれた晋助。いい夢を見られただけで満足、なんて大嘘だ。だけど思い出しちゃダメなの。振り返ってはダメなの。じゃないと、押し込めてた気持ちが溢れちゃう。

我慢しなきゃ。一人で頑張らなきゃ。銀時にこれ以上心配掛けちゃダメ。頭では全部、分かってるのに。ほろりほろりと零れてく、私のきもち。…ほん、とはね。本当は、もっと、もっと一緒にいたかったんだよ。

他愛ない話を飽きるぐらい沢山して、しょうもないことで笑って。そしたら、きっとあの呆れた顔で晋助は私を見下ろすでしょう?でもね、その時の晋助の目がね…凄く凄く優しくてもっと大好きになって。そう、もっと、もっとね…

大好きだよ、って。誰よりも愛してるよってそう伝えたかったけど。…きっともう、二度と伝えることは出来ないだろうから。

「…っ好き」

今だけは、アンタを想って泣いていてもいい…?




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