――君の目は君であって君でない、そうだろう?
僕の問いかけに六道骸は複雑な笑みを浮かべた。悲しいとか寂しいとかそんな単純なものではなかった。憎くて、自分の境遇を笑っているようで、彼は彼自身を憎んで罵倒するように笑った。
「これが僕の目です」
骸はまた笑った。小さく笑った。
「これが今までずっと汚いものを見てきた自分だ。だからこれは偽物でも僕の一部」
それも君か。つくりものの瞳でも、それが例え君を壊しても、骸のものであることにかわりはない。僕が知る六道骸ははじめから右の眼窩に赤い瞳を埋めていた。それが君だった。
でも君が、それではないのだ。君は左の眼窩におさまった青い瞳だし、君はその男にしては随分と長い髪の毛だし、君は僕の傍にある大きな手だし、君は君の動脈で静脈で血液で心臓でこころなのだ。
君は六道骸なんだから。
「君は君だよ」
例えそれが君をつくる一部だとしても、君は――。
「君は、痛いだろう。いろいろ見ていて、痛いだろう」
見なくたっていい。僕が君を君と呼ぶ。君の瞳も含めて君と呼ぶ。もうその目で君を痛くさせるものを見なくたっていい。これからはそうしたっていい。
何故なら君は君で、それは君の一部だから。
痛いものは僕もいっしょに咀嚼するから。それは半分になるだろう。左の目が痛いものを見ずに澄んでいるぶん、僕が咀嚼するから。

「ねえ、骸」
語りかけると、骸はつくりものの目から一筋、ひどく澄んだ液体を流して、今度はとてもへたくそに笑った。

(死人の目玉をしゃぶる)

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