きみのひとみ | ナノ

HAYATOと音美ちゃん編

※前回よりHAYATO×音美ちゃん要素が相当強く性描写ありです
※トキ音トキ百合もちょっとありますけどほとんどHAYA♂×音♀です。キャラ崩壊注意してください
※HAYATO様ちょっとゲスいかもしれません!ちょっと無理やり感あります!




「あ……」
 トキヤの伸ばした手を思わず音美は止めるように触れてしまった。トキヤは怪訝そうな顔をしている。それもそうだ。彼女たちはいま裸で、ベッドの上で、不埒な行為に至っているのだから。
「トキヤは、そういうことしなくて良いよ」
「どうしてですか?音美は私の胸をいつも触ってくれるのに……私だって音美のこと気持ち良くしたい」
「トキヤ……」
 ギ、とスプリングが軋んで彼女から口づけをしてくれる。ん、と鼻にかかった息を漏らしてしまえばますますトキヤが唇を押し付けるようにした。苦しげに音美が息をつくと、その隙を逃さぬとでも言いだけに尖った舌が入り込む。
「ん……あふ、ふう…トキヤ…」
「可愛い……」
「あっ……」
 そして先ほどの抵抗も虚しくトキヤの手は音美の乳房に触れ、むにと揉みこんだ。白魚のような美しい指先がツンと尖った乳首に触れる。その瞬間、痺れるような感覚が下腹部からきゅうんと広がった。
「私、音美の声が好きなんです」
「トキヤ……」
「もっと聞かせてください。あなたの大きな胸も、ここも、全部触りたい……」
「やっ……」
 彼女の美しい声で囁かれてしまえば一溜まりもない。もう音美はなすがままであった。
 トキヤは変わった。前は受動的でしかなかったのに、徐々に能動的となったのだ。指先も、嬌声も次第に大胆になっていく。それが音美には少し怖かった。
 今までトキヤを責めているときだけ自分は女ではないような感覚だった。けれども、こんな風にトキヤに責められている立場はひたすら自分が女だと認めざるを得ないような感覚なのだ。
 音美が堪えきれない声を零す度にトキヤはしたり顔で笑う。その顔がどうにもあの双子の兄と似ていて、小さな怖れと興奮が襲う。心臓が痛いほどに鳴る。それがどうにも苦手であった。
「トキヤぁ……」
「きゃあっ!? 」
 きっと音美は切り替え、彼女の小ぶりな胸の先をきゅむっと摘まんだ。瞬間トキヤの体がびくびくする。
「やっぱり、おれがやるから……トキヤはそのままきれいな声出してて」
「どうしてですか」
 きれいな顔が至近距離で見つめている。長い睫毛が白い頬に影をつくっていてやはりきれいだ。
「好きな人にいやらしいことをしたいと思うことはいけないことですか? 」
 深い青色の瞳はとてもきれいで、きれいすぎて音美は見つめ返すのが怖くなった。その台詞は音美が彼女の双子の兄であるハヤトに言ったものとまったく同じものだ。
「でも、おれにやらせて。おれがトキヤに触りたいんだよ」
 そう言うとトキヤは諦めたようにため息をつき、軽い口づけを交わした。



「おはやっほー!」
 いつも通りに授業を終えて、いつも通りに練習も終えて、すべていつも通りに終わるはずだったのに部屋に戻るとそこにはハヤトがいた。思わぬ彼の出現に音美はきゅっとスカートの裾を握り締める。心臓が痛いほどに鳴り響いていた。ベッドに座り込む彼の目を見るだけであの時の記憶が徐々にフラッシュバックしていく。もはや逃げ出したい気分でいっぱいだった。
「な、なんでいるの」
 やっと絞り出した言葉はこれだ。我ながら情けない声色であった。
「あれ?トキヤにお願いしたんだよ。遊びに行ってもいいかなあって」
「そんなことは……!」
 慌ててポケットに突っ込んだ携帯を確認すると、確かにトキヤから不在着信とメールが届いていた。メールの内容は兄が部屋に来ると言う旨のものであった。練習に夢中でまったく連絡に気付かなかった……!
「トキヤ今日、遅くなるみたいだよ。音美ちゃんが寂しいだろうから話相手にでもなってあげてって」
「……」
 トキヤは重度のブラコンだ。彼女にとって双子の兄の彼はとても優しく安心できる存在であろう。もしかしたらトキヤはハヤトと音美に仲良くなってもらいたいと思っているのかもしれない。時たま三人でいつか出かけてみたいですなんて呟いていた。その時は音美も賛同していた。でも今はそんなことをまったく思えない。一週間前の彼との会話をまだ覚えている。
「ギター重いでしょ?置いたら?」
「!」
 ハヤトがぬるりと立って、音美に近づいた。そして彼女が体を硬くしている間、背負っていたギターをひょいと取り上げてしまった。それに触るなと音美は言いそうになってしまったが、存外楽器を扱う手は丁寧なものだった。
「……ギターやってたの?」
「ん?まあね……あとはピアノとかも」
「ピアノ、弾けるんだ」
「小さいときはトキヤと一緒に教室通っていたよ。発表会とかで連弾とかもしたし……僕はクラシックも嫌いじゃなかった」
「へえ……」
「お笑いアイドルの僕が意外?」
「そんなこと」
「まあ、テレビではクラシック聴いたら眠くなっちゃうにゃあとか言っているからね。でも本当は割と好きだったんだよ。ピアノの音はきれいだからね」
 そう話すハヤトの横顔はとても穏やかできれいだった。トキヤととてもよく似ているけれど、男の人の顔だ。音美は無意識に顔をあげて彼の話を聞いていることにはっと気づくと少し気恥ずかしくなった。
「でも、わかるよ」
「ん?」
「ハヤトの歌声聴いていたらなんとなく。元気の良い曲も似合うけれど、声質的にはピアノを使ったバラードの曲のほうがすごく合うなって思っていたし、歌っている声も気持ちよさそう」
「……」
 音美はハヤトの歌声を好ましく思っていた。素直に感想をツラツラと述べていると、突然ハヤトがぎゅっと手首を握った。熱い体温にビクンと大きく体が揺れる。
「な、何!」
「トキヤとはまだああいうことやっているの?」
「ああいうことって、」
「こういうこと」
「わっ……」
 そのまま腕を引っ張られると肩を抱かれ、顎に手を添えられる。急に変わったハヤトの雰囲気に戸惑いが隠せない。
「君は本当に迂闊だにゃあ」
 クスクスとハヤトはテレビと同じ顔で笑う。先ほど、音楽の話をしていた時の顔はとても優しかったのにがらりと変わってしまった。音美の胸は不安定に鳴る。けれど一瞬でもトキヤが男になったらこんな感じなのかもいれないと妄想に耽ってしまった。それぐらい二人は似ているのだ。
「トキヤと別れてくれない?」
 だが放ったセリフは恐ろしいものだ。トキヤの顔でそんなこと言わないでほしい。じんわりと泣きそうになりそうだった。
「い、いやだ」
「人の妹を変な道へ誘わないでほしいんだけど」
「どうしてそんなひどいこと言うの!?」
「ひどいこと?僕はやんわりお願いしているつもりなんだけどなあ」
「……っ」
 ぐっと腰を抱かれ、顔がますます近づく。ハヤトの冷たい笑みには温度がない。音美の胸は恐怖でいっぱいだった。
「今日も君にそれを言うつもりだったんだ。ちょっと注意したら帰ろうと思ったんだけどね…」
「う……はなしてよ」
「君は本当に迂闊だよ。こんな部屋に男といて。危機感ってものはないの?」
「や、やだ…」
「それともトキヤと同じ顔だから油断しちゃったかにゃ?」
「……っ!」
 一瞬緩んだ腕を振り切り、音美はハヤトの頬を叩いた。白い頬が赤く染まる。小さくハヤトが「痛……」と呟いたのを聞いて、音美はハッとした。けれど自分は何もしていない。悪いことなんてしていない!
「ハヤトが…!ハヤトが悪いんだよ、ハヤトがおれたちに干渉するから……おれたちは今のままでも幸せなのに、干渉するから…っ」
 今まで涙の膜がはっていた瞳からボロリと涙が流れ落ちた。一度流れるとそれはとまらない。静かに流れ落ちていた。
「きゃっ……!」
しかし泣いているのもつかの間、今度は手を引っ張られ、何が何だかという間にベッドに押し倒されてしまったのだ。よりによってトキヤのベッドだ。
「トキヤと別れて。あの子は何もわかっていないんだ。友達も恋人も。流されているだけなんだよ」
 ギシ、と大きく音をたててベッドは軋んだ。普段トキヤと音美が二人で乗っている時は鳴らないような音だった。
「おれとトキヤは、愛し合って……」
「本気でそんなこと言っているの?レズごっこはおしまいだよ」
「ごっこだなんて、」
「ごっこだよ。このまま君に関わってたらトキャは一生君に依存することになる。友達もできなくなる。君も……」
「おれも…?」
「…君も、男を愛せなくなる」
 一瞬、ハヤトが影のある表情をした。音美はそれにデジャヴのようなものを感じたような気がした。
「ひゃん!?」
 ちゅっと小さく音をたててハヤトは音美の首筋に触れた。ちゅっちゅっと唇が触れたり離れたりするたびに不安になる。すると音美の心情を察したようにクスリとハヤトが笑った。
「痕はつけないよ。僕もトキヤを悲しませたくないんだ」
「やだ、やだ、やだぁ……」
 暴れたせいで、ただでさえ短いスカートがどんどん捲れあがっていく。健康的な太股が露わになった。
「アイドルの顔、傷つけたお仕置きだよ」
 そしてハヤトは音美のシャツのボタンをひとつ外した。恐怖に彼女の目は見開く。
「でも、トキヤと別れてくれたら許してあげる。どうする?」
「そんなの、無理に決まって……」
「別に僕は絶交しろとは言っていないよ?でもレズごっこはやめてって言っているの」
「ごっこじゃない!」
「…君は男が駄目なの?」
「………」
 ハヤトの問いに音美は答えられなかった。彼に答えたくなかったから答えなかったわけではない。自分でもわからなかったのだ。ただトキヤが好きだからそういうことに至ったのだと思っていた。彼女が好きな気持ちには変わりはない。けれど男性を愛せないと言う決定的な感情があるわけでもなかった。自分自身とても曖昧に感じていた。
 そんな音美の心境を知る由もなくハヤトはまたひとつボタンを外した。彼女の豊満な胸はすぐに姿を現してしまう。
「……喋んなくなっちゃった」
「うっ……」
 それからハヤトは無言で彼女のボタンを結局最後まで外してしまった。ベビーピンクのブラが露となる。
 ふに、と触れると音美がビクンと震えた。それを見たハヤトは声を潜めて囁く。
「本当はわかんないんじゃない?自分が男が好きか、女が好きなのか」
「……っ」
「男を知れば、何か変わるかも」
「やっ……!」
 ブラのフロントホックをプチンと外してしまえば、大きな胸が広がる。もう恥ずかしくて死んでしまいそうだった。顔から火が出そうだ。でも音美は抵抗できなかった。どこか、下腹部の奥で何かを期待しているような動きを見せていたからだ。
「んく……」
「あっ…!」
 彼女の期待通り、ハヤトは音美の胸の先に吸い付いた。触れることもなく行われた性急な行為に彼女の体はついていけない。しかし女性の唇や舌とはまるで違う感触に身悶えた。トキヤよりずっと乱暴な舌先だ。もじもじと太股を擦り合わせてしまう。
「すぐ硬くなった…いつもトキヤに吸わせてるの?」
「そんな言い方やめて…!」
「それとも逆かな?君がトキヤのを…」
「お願い!やめてよぉ…!」
「どうして?恥ずかしいから?」
「トキヤの顔でそんなこと言わないで!」
「…でも濡らしてるね」
 触れてもないのにハヤトはいやに確信めいたものの言い方をした。また脚が揺れてしまう。脚の間も反応を示してしまう。
「ぬ、ぬれてない…」
「そう?じゃあ試してみようか」
「やだ!やめて…ああっ…!」
 大きな手がスカートの中に入り込み、彼女のショーツを撫であげた。筋をなぞるように触れられびくびくする。トキヤはこんな風に触らない。ハヤトは、女を知っているんだ…!そう思うと途端に複雑な心境になった。
 本当に今日自分は男を知る体になってしまうのだろうか?本当に?トキヤを置いて?
 そう思っている間、ハヤトはついにショーツを脱がせてしまった。はい、足あげてと言って右足からそれを脱がせ、もう片足に引っかかった状態である。紺色のソックスにベビーピンクのショーツがかかったままで妙に艶めかしかった。
「ひン…!?」
 そしてハヤトはスカートの中に顔を埋めた。彼女の脚の間に舌先を伸ばし、それをべろんと舐めあげる。今度こそ死んでしまうと音美は思った。啜るような音を出されればもうどうにかなってしまいそうだ。
「あっ、あっ…ああ〜…っ!やだ、やだぁ…!」
「ンッ…んちゅ…」
「お願い、やめて、やめて…!」
 ひっきりなしに喘ぎと拒絶の言葉が唾液と共に垂れる。けれど知っているのだ。その舌がどう動き回って、どう舐めあげるだけで簡単に絶頂に達成することを知っているのだ。トキヤの丁寧な舌運びとはまったく違うハヤトの舌に腰が浮きそうになる。ちゅうっと肉芽に吸い付かれ、待ちに待った快楽に音美は思い切り声をあげてしまった。
「あっ、ああ…っやだ、や……っ」
「気持ちよさそうな声出しちゃって…本当に君は……」
「うっうう…ん、きもちい、きもちいよお………」
「………」
 思い切り吸い上げると音美は声もなく達した。びくびくと大きく体がしなる。下腹部から顔をあげたハヤトの顔はべしゃべしゃで音美はそれを惚けた顔で見つめていた。
「ん……」
 すりっとハヤトの硬く反応したものが太股に擦られる。それだけで心臓が破裂しそうだった。
 あれを、本当にいれられてしまうのだろうか。
 そんなことで頭がいっぱいだった。とろけた顔をした音美の頬をハヤトは撫でてやる。思わず心地よさに目を閉じてしまった。
「気持ち良かった?」
「うん……」
「トキヤと別れる?」
「それはだめ…」
「じゃあ僕と付き合う?」
 閉じていた目を再び開いた。
 ハヤトの表情は今までとは違う顔だ。先ほどの冷たい笑みを浮かべていたものではない。頬を赤く染め上げ、息も荒く、興奮した男の顔だ。トキヤと同じ顔なのにまったく違う。男なのだ。
「……それもだめ……」
 ボロリと音美はまた泣いた。トキヤを裏切れないと言う気持ちだけは確かだった。こんな快感に弱い駄目な自分であっても。
「君はバカだ…」
 頬に触れるだけのキスをした。唇にはしなかった。音美は無性にその唇が寂しくって、ねだるように尖らせたがハヤトは何もしなかった。
「僕はもう、帰るよ」
「え、でもそれ…」
 ハヤトのスラックスは膨らんでいるのがバレバレだ。けれど彼はかっこつけて笑った。
「君が気にすることじゃない」
 え〜本当かなあ…と内心音美は思ったがハヤトにあわせておいた。
「体、だるいでしょ?適当に着替えて寝てなよ」
「どうして、急に優しいの」
「こんなことしておいて女の子に優しくしないのは男として最低でしょ」
 散々最低なことをしておいて、なぜ今更そんなことを言うのだろうと思った。けれどやっぱりハヤトに合わせておいた。トキヤに似ているけど似ていない。トキヤはもっと素直で可愛い。比べるたびに、どれだけトキヤが可愛いか再認識してしまう。
「トイレつかっていいよ」
「うわっ…女の子がそういうこと言うの萎える…」
「もうなんだよお…おれはシャワー浴びてくるからいいよ、適当につかってて。鍵トキヤから借りているんだよね?その間に帰って。戸締りもよろしくね」
「ずいぶん割り切っているなあ…」
「もうなんか、どうでもよくなった…」
「わ!かわいくない!さっきキスねだるような口してたくせに!」
「う、うるさーい!もうはやく!出てって!か、帰って!」
「はいはい。あっやっぱりトイレ貸してください」
「……わかったってばあ…」
「あ、今日のことはトキヤには内緒ね?」
 すっとハヤトのトーンが下がった。その声に音美の中の体温も冷める。途端に罪悪感がふつふつと湧いてきた。
「…君は本当にトキヤのことが好きなんだねえ…」
 ふわりと頭を撫でられた。そういえばずっと触れてきた手は優しかった。
 拒もうと思えば拒められたはずなのに振り切れなかったのはこの手が優しかったからだろうか。それとも快感がほしかったからか、ハヤトの顔がトキヤと同じだからだろうか。
「それじゃ、トイレ借りるにゃ」
「あ、うん……」
 きらっとスマイル弾けさせてハヤトは小走りでトイレに向かった。 ごろりと音美はベッドに横たわる。体がだるい。今ハヤトはあのトイレで自分を慰めているのだろうか。やっぱ男ってかっこわるい。トキヤは世界で一番かわいい。もうわけがわからないな…。
「シャワー浴びよ…」
 きっと浴室に入って、あがったらハヤトはいないだろう。代わりに可愛くて愛しくて仕方がないトキヤがいるはずだ。早くトキヤに会いたい。トキヤに触れたい。トキヤ、好きだよ。