おとき | ナノ



青い鳥


※すっごく捏造
※数年後パラレルです
※やりたい放題のひどいパラレルなので何でもありな方向け





アイドル一十木音也電撃結婚!
お相手は人気急上昇中のグラビアアイドル×××!


朝、ニュースを見て私はマグカップを落としてしまいそうになった。
かつての恋人が電撃結婚と報道されれば、落としそうにもなる。私と彼は別れて二年以上にもなっていたけれど、毎日CMや広告、番組、雑誌で彼の姿は見ていたから今どうしているかなんて考えることはなかった。
ところが、結婚だ。
今まで別れた実感はあまりなかったが、これにて終止符を打たれたような気がした。





相手は小柄で可愛らしい顔立ちの女性であった。ショートボブで目がぱっちりとしていて、まるで小動物のようだ。どちらかと言うと七海くんに雰囲気が似ている。音也が惹かれるのも無理はないかもしれない。
私はどこか安心していた。これで黒髪で涼しげな顔立ちのすっとした雰囲気の女性だったら私は立ち直れなかったかもしれないからだ。

式の案内状が届いたとき、私はギリギリまで出席か欠席、どちらに丸をつけるか迷っていた。あの八年は私たちには長すぎたのだ。

幼く無謀で、情だけではカバーしきれない関係…それでもどうにか繋がっていたかった。
薄いピンク色のカードに青い鳥が印刷されているのが目に入る。それを見て私はなんとなく、彼の幸せを願ってやらなければと言う気持ちになった。いや正しくはそう言い聞かせた。そして出席に丸をつけたのだ。



嫌味なほどに青空は澄んでいる。
私は翔とレンと式場へ向かうことにした。

翔は結婚式であってもポリシーと言わんばかりに帽子を被っている。童顔の彼はいつまでたっても金髪が似合っている。レンは相変わらずスタイルが学生の頃のまま、パーフェクトに維持している。スーツも完璧に着こなしていた。
年はとったはずなのに、こうして集まると変わっていない気がして安心する。


「あーやっぱり音也が一番乗りかぁ」
「俺の予想通りだったね」
「なんだかんだあいつ人気あったからなー親しみやすいっつーの?俺音也と飲みたいって子から飲み会すげー頼まれたもん」
「でもずっと断っていただろう?」
「そうなんだよ!あいつ騒ぐのとか好きなのに意外だったんだよな!」
「恋人を大切にするタイプだったみたいだね」
「はぁ!?恋人!?俺知らねーんだけど!?あっ今の子?」
「違うよ。急に誘いに乗るようになったじゃないか。だから俺はピンときたのさ。恋人と別れたから飲み会するようになったんだってね」
「あ?いやまー…あー…うーん??」
「今のレディではないと思うよ。イッキは裏表ないように見えて肝心なところは見せないところがあったみたいだしね」
「お、おい…めでたい席にそういう話やめようぜ!なあ、トキヤ!」
「まぁ…この結婚で親子のCMや父親、夫が主体のファミリー向けのオファーも来るようになるかもしれませんね」
「おめーは仕事の話かよ!」
「イッチーは知らないのかい?イッキの恋人の話。学園内では一番仲良かったじゃないか」
「…私と彼は、そういう類の話はまったくしませんでしたから…」
「ははは!っぽいよなーお前らってそんな感じ!」


あっけらかんと笑う翔に私はズキリと胸を痛める。
レンは読めない笑みを浮かべていた。



時間になり、チャペルにつくと、急に厳かな雰囲気になる。
新郎…音也が入場したとき、私は胸が張り裂けそうだった。
白いタキシードがよく似合う。けれど、着崩すことなく、ぴっちりとした着こなしは彼らしからぬものだった。
壮大なパイプオルガンが流れる中、音也が一歩一歩踏み出す。彼はまっすぐ見据えていて、こちらには目もくれない。私は音也を凝視していた。涙は出なかった。音也とすれ違い、彼はどんどん行ってしまう。行かないでくれ!と心の中で叫んだ。

それからはあまり覚えていない。白いベールに包まれた花嫁がヴァージンロードを歩くと、一気に会場が涙ぐんだ。
誓いのキスなんて見れなかった。私だけが、あのチャペルで俯いていた。