★ひとひら願う 第1話

約束するよ。
いつかまた君に廻り逢えたら、また君と恋に落ちる。
二度と離さない。
だから君もまた、僕を愛して。

誓うように、祈るように。
そう告げると君は涙を一滴落とし、そして優しく微笑んでくれた。
それが僕の最期の記憶――。


時は巡り、僕は再び生まれ落ちた。
物心のついた頃から昔の記憶があった。
動乱を駆け、病に臥し、愛した女性と静かに暮らした幸せな日々。
当時死病と言われた労咳を抱えていた僕には、幸せな時間は少ししか与えられなかった。
僕自身は全てを受け入れていたけれど、やはり彼女を一人残して逝くしかなかったことが辛かった。
だから生まれ変わった時、すごく嬉しかった。
あの約束が守れる、と。
今度こそ二度と離さない、ずっと傍にいるから。

だから、どうか早く、彼女に廻り逢えますように。





*****






この世に生れ落ちて既に十六年。
今年で十七になってしまう。いつもいつも愛しい彼女の面影を探していた。気づけば彼女と過ごした倍以上の年月が経過している。



桜の咲く季節、僕は漸く彼女と再び廻り逢えた。



その日は始業式。
在学生は新しいクラスの確認をするだけで終わり、午後から新入生の入学式だ。もしかしたらという淡い期待を胸に、僕は帰宅もせずに正門の前に佇んでいた。
これはこの季節の恒例イベントだ。

式の時間が近づくにつれ、正門をくぐる初々しい新入生の数は増えていく。正門とは違う位置にある自転車置き場から入られたなら調べようがないな、と今さら後悔しながら、僕は右へ左へと動き少なげに視線を移動させていた。

強い風が吹き、桜の花びらが一際散った。砂埃を避けるために目を閉じて風が通り過ぎるのを待つ。
そして、次に目を開いたとき。この高校の制服に身を包んだ君を視界に捉えた。


ドクン、と心臓が高鳴る。まるで誰かに掴まれたかのように苦しい。柄にもなく緊張している。早く立ち上がって、駆け寄り、抱き締めたい。なのに身体は動いてくれない。

「・・・ちづ、る」

僕の小さな呼び声は喧騒に掻き消され、君は僕に気づくことなく正門の向こうへと歩いていった。暫くその後姿を見つめ、思い出したように息を吸う。

間違いない、彼女だ。僕の愛しい愛しい、千鶴だ――。

かつてのような和装ではないその姿に、若干の戸惑いがある。だってあの頃は人目に晒されることはなかった彼女の白く綺麗な足が、丸出しだったのだから。あれを見ていいのは僕だけだったのに。

現代の文化にちょっとだけ拗ねてみたけど、表情は喜びで弛みまくっていた。



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2011.02.27

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