★ひとひら舞う 第1話



約束するよ。
いつかまた君に廻り逢えたら、また君と恋に落ちる。
二度と離さない。
だから君もまた、僕を愛して。

まるで誓いのように紡がれた彼の最期の言葉。
貴方の言葉はいつも私を幸せにしてくれる。
嬉しくて、嬉しくて、私は彼の手を握り締めて頷いた。

約束します。
いつかまた廻り逢えたら、また貴方に恋をする。
二度と離れない。
だから必ず、私を愛してくださいね。

お別れが悲しい。
貴方がいないこの世をどう生きればいいかなんてわからなかった。
だからその約束が嬉しかった。
これは「さよなら」ではなく「またね」なのだと、・・・そう思えたから。







*****






桜の咲く季節。
今日は高校の入学式。高校は家から少し離れた場所にあるため、同じ中学出身の友達はゼロだ。父は仕事が立て込んでいて今日は来られない。残念そうにしてくれるだけで私は嬉しかったけれど、やはり知っている顔が皆無なのは心細い。

駅から学校まで歩くと20分。次第に同じ制服に身を包んだ人たちが増えてゆき、どこかホッとする。どんな学校生活が待っているんだろう。友達はちゃんとできるかな?学校に近づくほどに期待も膨らんでいく。

程なく、学校の正門が見えてきた。
高校見学、入試、合格発表、入学説明会――そして入学式。ここに来るのは5回目だ。
今日からは毎日、ここへ通う。なぜ家から遠いこの高校を選んだのかは、自分でもよくわからなかった。私立ならまだしも、ここは公立高校だ。そもそもは中学のクラスメイトに誘われるまま学校見学に行ったことがキッカケだった。クラスメイトはここではなく、地元の、家に近い高校を選んだのだけれど。

「ねぇねぇ、あの人、カッコ良くない!?」

「門の横にいる人?うん、カッコイイカッコイイ!!」

前を歩いていた2人組の女の子が小さな黄色い声を上げる。私の視線も自然と門の横へと移動する。

(――・・・あ)

正門の横に背を寄り掛けている男の人。スラっと伸びた長い手足に、着崩しているのにそれがとても似合う制服姿。動くたびにふわふわとする茶色の髪と、鼻筋の通った綺麗な横顔。

(か、格好良い・・・・・・)

そのとき、強い風が吹いて桜の花びらが舞い散った。まるで彼に降り注ぐように。同時に、彼をまじまじと直視していたことに気づき、慌てて視線を元に戻す。

彼は新入生なのだろうか。否、きっと上級生なのだろう。また会えるといいな、と思いながら、正門をくぐった。そのとき視界に飛び込んできたものにより、千鶴は自分がこの学校を選んだ理由に気づく。

――ああ、私はこの光景が見たかったんだ。

正門から真っ直ぐの位置にある、大きな大きな一本の桜の木。美しく咲き誇り、今日という日を祝うかのように、はらり、はらり、と散る姿。どこか懐かしい、この光景を。





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2011.03.22

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