★pitpitpity(サンプル)


P20 / ¥0 / A5 / オフ / 2014.02発行

学パロの沖田×千鶴。
遠く離れた遊園地へ千鶴を連れて行ってイチャイチャしようと企む総司の、なかなか上手くいかない話。
彼氏彼女です。
※文字サンプルは改行を増やしています。






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 ――テレビ番組の特集に瞳をキラキラ輝かせていた千鶴を、どうにかしてそこへ連れていってあげたいと思ったのだ。
 総司は早速調べ、計算する。
 パークのパスポート代から千葉までの交通費、食事代や土産代、その他諸々。
 お小遣いだけでやりくりしている高校生の総司には些かきつい金額だったが、節約に節約を重ねて一ヶ月くらいバイトでもすれば、どうにかなると踏んだ。

 だけどお金に余裕のないお出掛けを、千鶴は楽しんでくれるだろうか。
 格安の夜行バスで往復移動――。
 窓側の席には千鶴、通路側には総司。
 狭い車内で「ちょっと寒いね」なんて言い合いながら何時間も密着していられるのは夢心地に違いない。
 だけど何時間も座りっ放しで自由に休憩を取れないのだ。
 きっと彼女には無理をさせてしまうに違いない。
 大体、夜行バスで往復したら金曜の夜に出発して、土曜の朝に到着。
 一日遊び呆けてまたバスに乗り、京都に戻ってくるのは日曜日の午前中になるだろう。
 つまりは二泊だ。
 そんなふうに移動ばかりで二泊を過ごすくらいなら、自分の家に千鶴を連れ込んで閉じ込めて二日間ずーっとイチャイチャしているほうが、総司にとっては魅力的な週末になる。

 いや、それを言い出したらどこへも行けなくなるし、そもそも男と二人きりでの連泊を彼女の家族が許してはくれないだろう。
 ってことは、移動手段は日帰り可能な新幹線に切り替えるべきだろうか。
 予算が上がってしまうが、そこはバイト期間を二、三ヶ月に増やせばいいだけの話。
 だけど新幹線での終電を考慮すると、時間いっぱいまで遊べなくなってしまう。
 千鶴にとって初めての場所なんだから、最後の最後まで楽しんでもらいたいし、何より総司は終電直後に予定されている打ち上げ花火が見たかった。
 冬の花火なんてきっと千鶴も感激してくれるだろうし、最高の思い出としていつまでも胸に刻んでおいてくれるはずだ。
 ってことはつまり、花火にうっとりしていたら終電を逃しちゃいました、という不運な展開を狙えばいいんじゃないかと思えてきた。
 あくまで事故であり、故意ではないってことを強調すれば、彼女の家族だって一泊くらい止むを得ないと許してくれるはずだ。
 もちろん新幹線のチケットは最初から翌日夜のものを買っておけばいい。
 千鶴にさえバレなければどうにでもなる。
 さらに出費が重なるけれど、ホテルもきちんと取っておいて、翌日は東京見物でもまったり楽しめば、それは充実したデートになるはずだ。



 総司はバイト情報誌を手に取り、働き始めた。
 千鶴との楽しい小旅行を思い浮かべながら、千鶴・学校・部活・バイトの両立に励んだ。
 ときどき千鶴から「どうしてバイトを始めたんですか?」と聞かれたり、「最近あまり一緒に居られなくて寂しいです……」と拗ねられたりしながらも、明るい未来のために一日一日を生き抜いた。
 そうして三ヶ月が過ぎた頃には目標金額も溜まり、幸せへの第一歩を踏み出そうとして――

「……ごめんなさい。私、行けません」

 断られた。
 まさか断られるとは思ってもみなかった総司は、一瞬眩暈を起こしかけるも、なんとか持ち堪える。

「どうして? 千鶴ちゃん、前に行きたいって……」

 これじゃあ一体何のために千鶴との貴重な時間を削ってまで金を稼いだのかがわからない。
 まあ、使い道なんて千鶴とあんなことをしたりこんなことをしたりと沢山あるのだから構わないのだが。
 でも、だけど、千鶴にデートを断られたことへの動揺が測り知れない。
 しかし、総司の不安はただの取り越し苦労に過ぎなかった。
 千鶴が急に視線を彷徨わせながら、なにかを誤魔化すように理由を口にする。

「そのっ、行きたいのも山々なのですが、二月は……色々出費が多くて、お金がなくて……」

 すぐにピンときた。
 女の子の二月の出費と言えば、バレンタインデーにほかならない。
 きっと千鶴は大好きで堪らない最愛の彼氏のために腕によりをかけて甘いお菓子を作ってくれるのだろう。
 今から楽しみだ。
 もちろん言われるまでもなくその日は空けている。

 バレンタインと小旅行。
 二月に二回も一生の思い出に残るようなイベントがやってくるなんて、嬉しくてたまらない。

「お金のことなら気にしないで。僕が出すから」

 そう、そのために今までバイトしてきたのだ。
 総司はにこやかに微笑む。だが、千鶴がぶんぶんと首を振って、拒絶を表した。

「そんなこと駄目です。自分の分は自分で出します」
「え、でも……」

 意外と頑固な千鶴は、一度言い出したら聞かない。
 でもお金はないと言っていたし、かといってバレンタインデー予算を節約されるのはちょっと寂しい。いや、それよりも――



こんな感じの話です(´∀`*)




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