キスの瞬間は、まるで永遠のように感じる。
実際はそんなの有り得ないことは、俺の純理系(理系のはず)の脳みそは理解している。
だけど、ホントに思うんだ。

腰に回された腕、
密かに目を開けると存外必死そうな日向の顔、
触れた唇から広がる熱い、熱い熱。
じわじわと俺を蝕んでいく熱。

キスするその瞬間は、いつまでもいつまでも続く永遠に感じるんだ。




「ひゅうが」
「……」
「ひゅーうーが」
「…なにやってんのお前」

意味もなく日向の名前を連呼する俺に、日向が怪訝な目を向ける。
この少し前にも同じやり取りをして、用事があって呼ばれたと思った日向に軽く叩かれた。
軽くとは言え痛いからやめてもらいたい。

「いや、なんか舌が回らなくて、さ」
「はぁ?」

たまに、こういうことがある。

運動したり、寝起きだったり、所謂体温が高いときによく起こる。
舌が回らず、簡単な単語ですら噛んでしまう。
今日向の名前を呼んでいるのだって、その感触を確かめているわけで。
こういう時は口の中の感覚がぼんやりとしか掴めない。

「ほら、今ひゅうがって言えてる?」

自分じゃわかんないんだよね、と言うと日向はなにがおかしいのかも判らない様子で首を捻った。
それでも、口の中の違和感は消えていない。

「…………」

変だな。と、小声でひゅうがひゅうがと連呼する。
日向の名前を呼んでるのは単純に近くに日向がいたからだ。

「ああもう、うっせぇ…っ」

しまった、怒らせた。
日向が悪態を吐いた瞬間、そう思った。

「わる」

ちゃかして謝ろうと顔を上げると、不意に俺の視界に影が落ちる。

「ひゅ、」

ひゅうが、と言いかけた声は喉に消える。

半ば強引なそれは、恐らく一瞬の出来事だったはずだ。
だけど、やけに長く感じた。

日向の顔が近い、
日向の手のひらが俺の後頭部を押さえて、
視界には日向しか見えなくなった。
かちゃ、と微かに音を立てた眼鏡が冷たい。
思わず目を閉じた。
まるで自然な流れで押し付けられた唇。

日向に声をかけようとして微かにあいたままだった唇の隙間から、日向の舌が入り込み、
俺の口の中を動き回る。
まるで逃がすかとでも言うように、全部を味わいつくすように。

腰に回された腕を微かに感じた。
密かに目を開けると存外必死そうな日向の顔、
触れた唇から広がる熱い、熱い熱。
じわじわと俺を蝕んでいく熱。



「ひゅ…っ」
「…ちょっと黙れダァホ」






あとがき

お久しぶりです。
最近は書く気力が続かず、なかなか書けません(・ω・`)
書きたいものは沢山あるのですが…
結局、フォロワーさんに贈る約束を取り付けて無理矢理書きました。
待ってる人がいると書いちゃう不思議(´ω`*)






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