甘えたさん






恋人の、自分しか知らないとこがあるっていうのはきっと幸せなことだ。



「おら1年!休むな動けー!」

体育館に、森山の声が響く。
それに若干へばった1年の声が続いた。

ふとした瞬間に「女の子紹介ヨロシク」とか「あの子の為に俺は今日頑張る」とか宣う森山は、実は1年にとって密かに怖い先輩の1人だ。
にっこりスパルタ、所謂ドSタイプ。
笠松が黄瀬の相手をせざる終えない時などは森山が1年の面倒をみる。

そんな恋人は、俺から見ても格好いいし、愛おしい。
頑張ってるなー、と思う。


でも、
無理してるなーとも思う。


「小堀ー、今日レンタルショップ寄って帰ろう」
「なんかいいのあったか?」
「こないだ新作のレンタル始まったんだよ」
「そうか、いいな」

練習が終わり、着替えてる所に森山が寄ってきた。
ここ数週間は、週末に森山がうちに泊まり、一緒にDVDを見るのが当たり前になってきている。
学校に部活に。
どちらも力を入れている学校のせいか、放課の時間が少なく、一緒に2人で過ごす時間が欲しいということで、2人で決めた。

さっさと着替えを終え、DVDを2、3本借りて俺の家へと帰る。毎週来る森山を、うちの両親はまるで自分の子どもの用に迎え入れる。
付き合いが長いとこういう時詮索されずに済む。

夕食も風呂も済ませ、さぁ見るぞと森山が推すアクションものの洋画を俺の部屋のDVDデッキに入れる。

内容はスパイもののアクションだった。主人公もヒロインも格好良く、彼らを追うかつての組織から逃げる。昔の仲間たちの手を借りながら、なんとか組織から抜け出す―――…

そうやって、ストーリーも山場に差し掛かる頃。
とん、と、俺の肩に隣で映画を見ていたはずの森山の頭が乗った。
見てみると、眠いようでしぱしぱと目を瞬かせている。
まぁ、部活もあったし週末だ。眠いだろう。

「―森山、寝るか?」
「んー…まだ起きる。でもちょっと膝貸して…」

肩に寄りかかっていた頭がそのままずるーっと俺の足に移動する。
いつの間にか森山の身体は横になって眠りやすい体勢になっていた。

「そのままだと寝るぞ」
「ん…」

もう瞼があいているかも判らない。半分以上寝ている状態の森山から返事が帰ってくる。
森山は、たまにこうやって甘えてくる。
気丈だし、女の子女の子騒いではいるが実は極度の甘えただ。後輩たちに罵声をとばしている森山は強く振る舞っているだけ。
だから、こうやって素を出してくれることが嬉しい。素を出せる、甘えられる相手として俺を選んでくれたのは嬉しいんだ。

膝枕でうとうとと眠りにつきそうな森山が無性に愛しくて、その唇にそっと唇を重ねる。
ゆっくりと顔を上げると、顔を真っ赤にして目を見開いている森山と目が合った。

「なんだ、起きてたのか」
「こ、こここ小堀っ」
「ん?」

なんだ、この焦りようは。
キスは初めてではないし、身体も重ねたことがある。今更こんなに照れるようなことをした覚えはないが…

「あ、甘くて死ねる…っ」

訝しく思えば、両手で真っ赤になった顔を隠しながら森山が呟いた。

可愛い。

「悪い、森山」

可愛い可愛い可愛い。
俺の恋人可愛い、と何回も繰り返して、森山に誤ると、指の隙間からちらっと涙目になっている瞳が見えた。

「……て……」
「ん?」

何を言っているのかよく聞こえず聞き返すと、その瞳が俺の視線から逃げるようにそらされる。

「キス……っと、して………」
「……っ!」

ヤバい、今完全に下半身にきた。だってこれは、可愛すぎる。
キスのおねだりなんてそうそう見られない。
だけどふと、S心が働いてしまった。

もう少し、いじめたい。

「いいけど。俺次したら止まらないよ?森山疲れてるだろ」

明日も部活あるけど。と付け加えると、一瞬迷った素振りを見せた森山が、小さな声でいい、と呟いた。

「ホントに?…って」

もう一押し。
続けた確認の言葉と同時に、伸びてきた森山の両手が俺の胸倉を掴み、引き寄せた。
少し乱暴に唇が合わさる。

「いいって言ってるだろ……馬鹿っ!」

真っ赤になった顔と、涙目の赤い目。
苛められてじれた表情。
恋人のこんな顔を見て、我慢できるならそいつは男じゃない。



格好良くて甘えたな俺の恋人。


あとがき

小森需要ないですか。そうですか。
でも私は大好きなんですww






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