最悪な始まりの終わり方




出会いは最悪。

偶然居合わせた綺麗な顔立ちの氷室に見取れていると、氷室は、隣に立つ火神を見てから俺を見直し、

「可愛い彼女だな」

と。

続いた言葉は「大我の趣味が綺麗系だとは知らなかった」

一気に顔が熱くなって、とりあえず隣で笑いを堪えて震えている火神の腹に一発、肘を入れた。






「いや、もう…その件に関しては俺も悪かったと…」

ちょっと拗ねる材料にその話は結構有効。
俺の機嫌を取り損ねた氷室は困ったように目の前に手のひらを合わせている。

実は氷室のその困った顔が、ちょっと、ほんのちょっとだけお気に入りだとは言えない。
だから困らせたくなって、定期的に蒸し返してみたりとか。


最悪だった出会いの割に俺の方から告白した想いの結果は意外と幸せで、告白するまで散々に悩んだのが嘘みたいな。
今は不安だとか、寂しさとか、そういうの全部ひっくるめて、付き合ってる実感。幸せで、仕方ない。

「俊…そんなに拗ねないでくれよ…」

そう言って、甘えるみたいに腰に纏わりついてくる氷室は意外と甘えたで可愛い。

付き合い始めて初めて見つけた発見だ。

「俊…」

身長差は座ってしまえば関係などなくなる。
俺の腰に縋るように回されていた右腕はいつの間にか背中を滑って俺の後頭部を押さえる。

「氷室…っ?」
「俊…ごめんな?機嫌なおして」

全く、氷室はずるい。
穏やかに笑う氷室の瞳に捉えられて、俺が断れる筈がないのに。
拗ねてみせてるだけってことすら、見透かされてる。

「ひむ…、」
「―タツヤ。辰也だよ、俊…」

徐々に近付いてくる氷室の顔。
不安定な体勢な上に、身体のスペックが完全に負けてる俺が、氷室に力で勝てる筈もなく。

「…タツ…んん、む…ふ、」

口づけられた唇はほの熱く、甘い。
「俊、あいしてるよ」


俺はずっと氷室に恋してる



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