firstkiss






俺たちの関係は不確かなものだった。



なんとなく、小金井が無駄にそわそわしているな、とは思っていた。


「どうなのっ?」
「いや、だから…」

扉を開けると同時に弾んだ声。
少し遅れて入った部室の角に、伊月が追いつめられていた。
相手は小金井。

「お前ら遊んでないでさっさと準備しろ!」

「だって日向!」

怒鳴ると小金井は凄い勢いでこちらを向いた。

「伊月ってば昨日すっげぇ可愛い子と楽しそうに歩いてたんだぜ!?ぜってぇ彼女だ!」
「コガ!!」

なぜだか妙に、伊月の声が大きく聞こえた。

「―…は、」

んなわけねぇだろ、こいつの恋人は俺だ。
思わず口走りそうになった言葉はなんとか思考に留める。

「馬鹿な事言ってねぇでさっさと準備。遊んでっと2倍コースだぞ」
「げっ?!」

言い放つと小金井はマッハで準備を始めた。

「―…日向」
「さっさと準備」

ごめん伊月。俺今余裕ない。



伊月が女の子と歩いていた。
それが頭の中を回っていた。
やっぱり女の子がいいよな、って。

半ば流されるみたいにつきあいだした俺らの関係は、
恋人と断言するには不明確すぎる。

手は繋いだけどキスはしてないし、ほかに恋人らしいことなんて何も。

俺は伊月が好きだけど、伊月は俺の事好き?
なんて、いつだったかカントクの家で読んだ安い少女マンガみたいで反吐がでる。
でも実際、それがききたくて、仕方ない。

ガンッ

ボールがゴールの枠に当たって落ちた。


ああ、もう、くそっ


「わりぃ、カントク。俺ちょっと顔洗ってくる」
「――わかった」

カントクの応えを聞いて、体育館をでた。

後ろから、伊月を呼ぶカントクの声が聞こえた。




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