ダジャレでじゃれる
こいつはほんっとにくだらない。
でもこんなこいつが好きなんだから仕方ない。
部活帰りの暗がり道。
今日も沢山3P決まったなぁ。っと、緩い満足感に浸る。
秋の終わり、冬に近づく冷たい風を避けるように日向のポケットの中で緩く繋がれた手から相手の温もり。
不意に、隣からの視線が気になった。
視線というのは総じて重みを感じる。
バスケをしている時は気にならなかったそれが、急に気になりだすのは、2人で歩いている時にはままあること。
横目で隣を歩く伊月に視線を送ると、穴が開くんじゃないかと思う位にガン見されていた。
はぁ、と溜息を吐いて、期待に応えるべく口を開く。
「…んだよ、俊。俺の顔になんかついてんのか?」
訊いてみると、伊月の口が待ってましたとでも言うように三日月に歪んだ。
あ、やべ。
このパターンには覚えがある。
なんかスイッチ押しちまったじゃねぇか、と自分をぶん殴りたくなった。
もう、取り返しはつかない。
「マスカラついてマスカラ」
俺の顔を指さしてドヤ顔で笑う。
子どもの悪戯じみたダジャレ。
慣れたつもりが、慣れていない。
つい、いらいら指数が上がっていくのを自分で感じる。
「お、…ま えなぁ…っ」
「そんな言って、ホントは笑い堪えるのに必死なくせにぃっ!?」
したり顔でしれっと宣う伊月に、頭のどこかでぷちっと音が聞こえ、その衝動に従い、日向は伊月の首を絞めた。
締め上げるとギブギブギブギブと伊月が腕を叩く。
最後に一締め、仕上げとして締めてやると、伊月は力が抜けてその場にへたり込んだ。
「ごほっごほっ、……死ぬかと思った…」
「こんなんで死ぬかよ」
言い捨てれば涙目で睨み上げられる。
ああ、もうこれだからこいつは。
いじめがいがある
(で?何だったんだよ、結局)
(だからマスカラ…)
(……よーし、歯ぁ食いしばれー)
馬鹿なことでジャレてる日月が好き(^q^)