熱中症
帰り道、ふと視界に花火大会のポスターが見えた。
きっと今年も、バスケの練習で行けない。
一度でいいから2人でイベントに行ってみたいものだ。
「伊月」
「んあ?」
ネタ帳に目を落としたままの伊月に声をかけるとなんとも頼りない声が帰ってきた。
「…熱中症って超ゆっくり言ってみて」
「…」
そこでやっと伊月は顔を上げた。
「それ知ってる。恥ずかしいから言わない」
呆れた、とでもいうように顔をしかめて、伊月はもう一度ネタ帳に目を落とした。
はぁ、だめか。
密かな欲望の暴露を見抜かれて俺の肩が下がるのがありありと感じ取れる。
「……それより日向、お腹減った。美味しいもの食べれるとこ連れてってよ。来週はストバスな。来月は試合観戦な。来年は花火大会行こう。……だめ?」
ネタ帳から目を上げずにそれだけ言った伊月。
俺は思わず口元がゆるむ。
「………なんだよ」
なんでもないみたいに、でもどこか拗ねたみたいに。
言った伊月は文句なしにかわいい。
「おう、行くか!」
来年も一緒に。
そんで、花火大会、一緒に行こうな。
あとがき
Twitter診断。
花火大会で好きな子に「熱中症って超ゆっくり言って」って言ってみたったー
好きな子「それ知ってる。言わない。恥ずかしいから。それより美味しいもの食べに連れてって。来週は海連れてって。来月は映画。来年も花火。だめ?」
悶えた。