君がいる幸せ





夏の夜空に星が耀く。

お酒の入ったふわふわとした頭のまま空をふり仰げば世界を明るく照らす星と見守る月。
人通りの少ない通りであることをいいことに、道路のまん中を陣取って歩く。

「きれーい!」

今日の飲み会は久しぶりに火神がアメリカから帰ってきたから、どうせなら集まろうぜと高校のバスケ部で集まったものだった。
日向と相田の結婚が決まってたり、土田のうちに二人目が生まれるって話だったり。
そんな大人な話に加えて、やっぱり全員昔と変わらずバスケバカで、わいわいとバスケの話をしたりバカやったり。まるで学生時代に戻ったかのようだった。

楽しい時間を過ごして、幸せな話を聞いて。
ああなんだかあの人に会いたい。
空を見上げて、早く帰ろうと帰路を急ぐ。

ぴぴぴ、不意に携帯が鳴った。

画面を見てみると、大好きなあの人の名前が表示されていて、
やっぱり好きだなぁとその存在を確かめた。

「はい、笠松さん。好きです」

思うだけじゃ足りなかった。
その電話に出て、思わず気持ちが溢れた。
電話の向こうで笠松さんがふっと小さく笑う。

「出た直後にそれかよ。…俺だって好きだけどさ」

呆れたように、温かいように。
噛み締めるみたいに睦ごとを返されてへへ、と笑う。

「飲み会終わったのか?お前歩き?夜はタクシー使えって何度言えばわかんだよお前はよ」
「すいません、ちょっと頭火照ってて。冷ましながら帰ってもいいかなぁって。もうすぐ着きますよ」
「…そうか。相変わらず強情」

彼の言葉にふふ、と笑って笠松さん、と読んだらん?と優しい声が帰ってくる。

「今日ね、アメリカから火神が帰ってきてたんです」

自分でもなんとなく声が弾んでいるのがわかる。普段と違い、それを隠そうとしないのは、好きな人と話しているという気軽さと、さっきまでのお酒と飲み会の席の余韻。
くすりと、電話の向こうで笠松さんが酔ってんなと笑った。

「元気でやってるみたいで。青峰も相変わらず無茶してるみたい。黒子も近々行くことになるかもって。寂しくなりますね」

そうだな、と相槌が返ってくる。
聞いて貰えることが嬉しくて、話し出した思考は止まらない。

「土田も二人目が…あ!聞いてください笠松さん!」

くってかかればなんだよ、と苦笑。

「水戸部も日向も結婚するんですって!水戸部はまだしも、日向はもっとかかると思ってたなぁ。だってあのヘタレですし」

くくっと笑いを噛み殺せば、お前なぁと呆れたように声が返ってきた。
笠松さんは日向のことを買ってるだけに、あまりヘタレヘタレ言うことが好きじゃないらしい。幼馴染みだからと許されてるラインだ。

「笠松さん、幸せですねー」

ふふふ、と息が溢れる。
よく喋るな今日、と向こうでも笑った気配だ。

「機嫌がいいんですよ〜」
「そうらしいな」

こうやってお互いに気がねなく、なんて、高校の時なら無理だった。
付き合っていたとしても、遠距離だったから、相手の都合、相手の都合と考えてなかなか話なんてできなかった。

夜の暗闇に冷やされた生ぬるい風が、頬を撫でる。

「笠松さん、幸せっていいですね」

呟くと、不意に笠松さんが息を飲む気配。

「…他人事みたいにいってんじゃねぇよ」

幸せなんだろ?
と言葉が続く。

「あは、そうでした」

笠松さんはなかなか言ってくれないから。どうなんだろうなって思ったんです。

その言葉は飲み込んだ。

笠松さんだって俺のこと好きなんだって俺だって知ってる。
俺も好きだから。

「お前、まだわかってねぇの?」
「?何をですか?」

機械ごしに聞こえる大好きな人の声はどこか不機嫌そうで、拗ねてるみたいに。

「だから俺が……いや、いい」
「え?」
「その話は後な。もう背中見えた」
「へ?」

そう聞こえた声に、後ろを振り返ってみると、意思の強い瞳と目があった。
ふわりと浮いていた気分が更に浮き立つ。

大好きなそのひとは、にやりとその口許を歪めた。

「俺がどんだけお前といられるのが幸せか、教えてやるよ。覚えとけ」

電話ごしの声と、直接聞こえる声が耳に馴染んだ。




あとがき

大好きなフォロワーさんに誕生日プレゼントに!
おめでとうございます!!

さて。
ここ数日、スランプに陥っていました。
もうね。文章が書けない。
ひたすら過去の自分の作品やらいろんな人の作品読み漁りました。
そのスランプをあけて一作目。
いつもより短くなったことをおわびいたします。

しのさんお誕生日おめでとうございます!!





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